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バニラズがCDJのライブで「おはようカルチャー」の演奏を止めた理由

12月18日

 

いつもgo!go!vanillasを応援いただき、ありがとうございます。

 

さる12月12日、go!go!vanillasのベーシスト、長谷川プリティ敬祐が東京都内を歩行中に大型車輌と接触し、都内病院に緊急搬送されました。

幸い、命に別状はないものの、事故発生時からいまだ意識が戻っておらず、複数の骨折などの外傷も見られるため、長谷川は当面、治療に専念させていただきます。 go!go!vanillasおよび関係者一同は、本人が1日でも早く回復、復帰をできるようにサポートしていく所存です。

回復状況について進展がありましたら、今後、HPなどで発表させていただきます。

長谷川が復帰するまでの当面の間、go!go!vanillasはサポートベーシストを携えてライブ活動を続けていく予定です。

皆様には多大なるご心配とご迷惑をおかけしますが、長谷川プリティ敬祐の1日でも早い回復と復帰をお待ちいただけますと幸いです。

go!go!vanillasからの重要なお知らせ|go!go!vanillas

 

そのニュースは衝撃だった。発表された内容を読むと、かなり深刻な状況に思えた。

 

go!go!vanillasのバンド活動は順調だった。フェスでは大きなステージに立つようになり、CDもオリコンで上位にランクインするようになった。ワンマンライブの集客だって伸びている。

 

良い曲がたくさんあるし、かっこいいライブを毎回やってくれる。それでいて、これからが楽しみなバンドでもあった。

 

そんなバンドが今後の活動に関わる大きな出来事が起こってしまった。そして、若い才能あるベーシストが、今後ベースを弾けるかどうかわからない状況になっていることが悔しかった。

 

バンドの活動を止めても仕方がない状況。もしも活動を休止してもファンも納得するだろう。しかし、バニラズはバンドを続けることを選んだ。

 

その選択にバニラズのロックンロールの魂を感じる。音楽も存在も心の底からカッコいいと思う。

 

バニラズの音楽

 

go!go!vanillasの音楽は、聴いていて笑顔になれるようなロックンロールだ。反骨精神のロックというよりも、誰もが笑顔になってしまうようなハッピーなロックンロール。もちろんカッコいいい音楽ではあるけども、それ以上にロックの楽しさを伝えてくれるような音楽。

 

 

バニラズの人気を確定付けたのは『平成ペイン』という楽曲だと思う。

 

 カントリー調の演奏で聴いていて楽しくなってくる。MVもユーモアがあるし、ライブではお客さんもMVと同じように笑顔で踊っている。最高にハッピーな曲なんだ。

 

歌詞は皮肉も交えつつもユーモアがあって、それでいて前向きなメッセージもある。ロックンロールバンドにしかできないタイプのハッピーな曲。

 

 

人気もあり代表曲でもある『エマ』も聴いていて楽しい。こちらもカントリー調のロックンロール。ミドルテンポだけど、MVの女の子のように聴いていて踊りたくなる。サビでは一緒に歌いたくなる。これも最高に楽しいロックンロールだ。

 

バニラズはいつでも楽しいロックンロールを奏でてくれる。だからこそ、長谷川プリティ敬祐の居ないバニラズのライブを、どのように受け止めて観るべきなのかを考えると不安もあった。

 

バニラズはいつも通りに楽しいロックンロールを演奏できるのか。自分はそれを受け止めていつも通りに楽しめるのか。

 

プリティの怪我が発表された時、すでに複数の音楽フェスやイベントへの出演は発表されていた。その中の1つであるカウントダウンジャパンという音楽フェスで、自分はバニラズのライブを観るつもりでいた。

  

カウントダウンジャパン

 

楽しめずに辛い気持ちになるかもしれないという不安もあった。しかし、それでもステージに立つバニラズの姿は目に焼き付けたいとも思った。

 

お客さんの雰囲気は、いつものライブの開始前とは少し違う雰囲気にも感じた。少しだけ緊張感のあるような雰囲気。期待と不安が入り混じっている人も多かったのかもしれない。

 

定刻になりメンバーが登場した。プリティはいなくても、メンバーからは悲壮感は全く感じなかった。

 

サポートベースをこの日担当したのは夜の本気ダンスのマイケル。

 

マイケルは髪の毛を茶色に染め、プリティのステージ衣装と同じように蝶ネクタイをしている。まるでプリティのコスプレをしているかのようなルックス。遠くから見るとプリティがそこにいるように見える。いつもと変わらないバンドの姿に見える。

 

それを観た客の雰囲気が変わった。バニラズはいつも通りカッコいいロックロールとユーモアで楽しませようとしてくれている。緊張感はなくなった。みんながプリティのコスプレをしたマイケルを見て笑顔になった。その雰囲気のまま演奏が始まる。1曲目は『マジック』。

 

マジック

マジック

  • go!go!vanillas
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

 演奏が始まった瞬間、ロックンロールのマジックにかかったかのように客席の腕が上がる。パッと明るい雰囲気に変わる。いつもと同じように、楽しくて自然と笑顔になっちゃうようなバニラズのライブだ。

 

その後も『エマ』や『カウンターアクション』など代表曲で盛り上がる。これも楽しい。『平成ペイン』ではお客さんもみんな踊る。

 

いつもと同じように最高で楽しいロックンロールのライブ。

 

『平成ペイン』の演奏を終えると、ボーカルの牧達弥が改めて長谷川プリティ敬祐が不在の理由を説明した。

 

おはようカルチャー

 

牧の話を真剣に客は聞いていた。

 

ベースのプリティが事故によって一時意識がなかったこと。今は意識が回復し少しの会話ならできるようになったこと。すぐは無理かもしれないけど、プリティが戻ってきて一緒にライブをやる日を待つこと。バニラズは足を止めずに活動を続けるということ。

 

言葉を選びつつ真摯に説明し、想いを伝えてくれた。客さんもその想いをしっかり受け取った。

 

そして「あいつをみんなで起こそう」と言って、ライブの定番曲である『おはようカルチャー』を歌い始めた。

 

おはようカルチャー

おはようカルチャー

  • go!go!vanillas
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

ライブではサビのコーラス部分を客もいっしょに歌う。それがいつも楽しくて最高なんだ。

 

この日も、いつもと同じようにみんな歌った。大声で歌った。会場に集まった約2万人の歌声が響く。みんな笑顔で歌っている。とても多幸感に溢れたステージとフロア。

 

そして、コーラス部分だけ歌い、メンバーが楽器を置いた。演奏を始めないことに、少しだけ不思議に思った。しかし、最後の牧が話した挨拶の一言を聞いて納得した。

 

「続きはあいつが戻ってきたらまたやりましょう」

 

それを聞いたお客さんが大きな歓声と拍手を送る。この日でもっとも大きな拍手と歓声だったかもしれない。

 

バニラズは逆境すらプラスにしてしまった。楽しくて最高なロックンロールのライブはこうして「途中で」中断した。続きはまた今度。

 

バニラズを観たらワクワクが止まらない

 

繰り返しになるが、プリティの事故はバンドの活動を続けられなくなってもおかしくない出来事だ。それでもバニラズは活動を続けることを選んだ。

 

続けることは簡単なことではない。今のバニラズの状況ならばなおさらだ。

 

それでも続ける理由は、プリティがいつでも安心して帰ってこれるように、バンドの足を止めたくなかったのかもしれない。そのためにロックンロールを鳴らし続けようとしているのだと思う。

 

バニラズの音楽やライブが好きな自分も、それに応えるために全力で今後もバニラズの音楽を楽しみたいと思う。

 

そして、バニラズはライブで1つファンにワクワクするプレゼントをくれた。

 

プリティといっしょに『おはようカルチャー』を歌う「ライブの続き」を観る今後の楽しみをプレゼントしてくれた。逆境すらワクワクに変えててくれた。きっとプリティが戻ってきたライブは、もっと楽しいロックンロールのライブになるはずだ。

 

これからのバニラズのライブも楽しみだ。もしかしたら新曲だって発表されるかもしれない。またプリティのベースでバニラズのライブが観れる日がくることを想像するとらワクワクする。

 

カウントダウンジャパンでのライブの続きは、すぐには観れないかもしれない。でも、絶対に続きが観れる日が来るはず。それが楽しみで仕方がない。

 

そして、プリティが戻ってるまで足を止めずにロックンロールを鳴らし続けるバニラズのこれからも楽しみで仕方がない。 

 

プリティ、ゆっくりでも良いから、戻って来る日を待ってるよ。