2018-08-15 ロッキンはJ-POPのフェス コラム・エッセイ ROCK IN JAPAN FESTIVAL 日本最大の音楽フェスである理由 冷静に考えると異様だと思う。茨城県の駅からお世辞にも近いとは言えない会場に1日6万9千人の客を集める。それも4日間毎日同じ人数。都内でもこれほどの集客は簡単とは言えないはずだ。 日本最大の音楽フェスであるROCK IN JAPAN FESTIVA。 決して安いとは言えない金額のチケットは毎年全日ソールドアウトしている。毎年出演者を発表する前からチケット販売は始まり、誰が出演するかわからない状況でも多くの人がチケットを購入している。 「〇〇が観たいからフェスに行く」ではなく「ロッキンだから行く」という人も多いと思う。 日本最大のフェスになった理由はフェス自体に魅力があるからではないだろうか。 しかし、ロッキンに対して否定的な意見を言う人もいる。「これではJ-POPのフェスだ」「商業主義で利益を優先している」「ルールが厳しくてロックではない」などなど。 個人的にはそれらの意見は全て的外れに感じる。何もわかっていないなあと。表面的に見ると「ロック」という言葉が名前にあるのにポップさを感じるかもしれない。それ故に商業主義に感じるかもしれない。ルールもかなり厳しい。 だが、ロッキンはロックフェスであり続けていると思う。むしろ「J-POPのフェス」言われるようなフェスをやること自体がロックなのではと思う。 ロックとは何? そもそも「ロック」の定義とはどのようなものなのか。 Wikipediaの「ロック」の項目には特徴ときて下記のように書かれている。 ●リズム・アンド・ブルースや、ブルース、ゴスペルなどの黒人音楽を基に、カントリー・アンド・ウェスタンやブルーグラスなど白人の音楽スタイルを融合させて成立したとされている。 ●ロックのサウンドは、伝統的にエレクトリックギターが中心となる。 ロッキンの出演者の中にはこのような音楽的特徴を持ったバンドやアーティストは多い。自らを「ロックバンド」や「ロックミュージシャン」を名乗っているアーティストも多い。 しかし、ロッキンの出演者は様々な出演者がいる。アイドルやアニソン歌手、エレクトロニカやポップスど真ん中のシンガーになどなど。老若男女誰もが知っているアーティストも音楽的にロックとは言えないアーティストも多く出演している。 ロックをやっているアーティストだけでなく、幅広いジャンルで第一線で活躍しているアーティストをそろえているからこそ、1日6万9千人も集める日本最大の音楽フェスになったのだと思う。 しかし、それ故にロックが好きな音楽ファンに「全然ロックフェスじゃない」と言われることも少なくないのかもしれない。 実はロックな出演者だらけ? 最初期の多くのロックは既成概念や体制に対する反抗心や怒りを強く表現することが主体で、対抗文化(カウンターカルチャー)としての存在意義を持っていた。 上記は最初期のロックンロールに関する記述で、今はロックに対してはこういった意味合いは薄れているかもしれない。しかし、まったくなくなったわけではなく、このような精神性を今でも感じている人は少なくないはずだ。 自分もそのうちの1人。音楽的な部分だけでなくそういった部分でもロックに魅力を感じ惹かれている。 そういった意味では音楽ジャンルとしてロックをやっていない出演者も「ロックの精神」を持っている人たちが多と思う。 ヒップホップユニットのCreepy Nutsは「ロックフェスでヒップホップで沸かせます」と客を煽っていた。アイドルグループの私立恵比寿中学は「わたしたちがアイドル、エビ中だ!」と叫びロックフェスの客を盛り上げた。Mrs. GREEN APPLEは「ロックフェスで僕らのポップを鳴らします」と言ってからキャッチーなポップスであるStaRtを演奏した。 StaRt Mrs. GREEN APPLE J-Pop ¥250 provided courtesy of iTunes 自分の観た3組はそれらの言葉に意味を持ったうえで発していたように感じる。なんとなく発した発言ではないはずだ。Creepy Nutsもエビ中もロックとは違う音楽性でロックフェスで爪痕を残そうとしていたように感じる。 Mrs. GREEN APPLEはロックバンドと評されることが多いが、ポップでキャッチーな代表曲を最後に演奏しポップスの魅力をロックフェスで投げかけてていたように思う。 ロックを求めている客が多いであろう場所で、ロックとカテゴライズされていないアーティストが音を鳴らし客を沸かせる。その姿はロックフェスに対する既成概念や体制への反発でもあり、カウンターでもあると思う。 ある意味ではロックバンドばかり集めた音楽フェスよりもROCK IN JAPAN FESTIVALの方がロックな出演者をそろえているとすら感じる。 フェス自体もロックなのでは? ロッキンは他のフェス以上に快適だと言われている。特に導線に関しては7万人の近い客が会場内にいるとは思えないほどにスムーズだ。 ダイブなどの危険行為に関しても厳しくルールを決められている。他のフェスではルールがあるものの、暗黙の了解で許される場合も多い。 写真撮影ができるモニュメントなども様々な場所に設置されており音楽以外の部分でも楽しめるような工夫がされている。 ロックフェスとしては整備されすぎなぐらいに整備されているかもしれない。来場した人達全員が快適に楽しめるように工夫している。 そして毎年PDCAを繰り返し新しい取り組みや改善をしているのだ。それは音楽フェスのスタンダードを作ったとも言えるし、革命を起こしたとも言える。 ロッキンは「快適で全員が楽しめるようなフェスを作る」ことに関してはこだわりとプライドを持っていると思う。そして実際に良いフェスを作っている。 その姿勢はリスペクトできるし、その姿勢に「ロック」を感じる。 J-POPのフェス J-POP(英: Japanese Popの略で、和製英語である)は、日本で制作されたポピュラー音楽(広く人々の好みに訴えかける音楽)を指す言葉 ロッキンは幅広いジャンルの様々なアーティストが出演している。今年で言えばサザンやユーミンなど日本の音楽シーンを作り上げた大物もいる。 ロックもポップもジャンル関係なくごちゃ混ぜなフェス。だからこそ来場した多くの人を楽しませるフェス。 ロックフェスと言うよりもJ-POPフェスと言った方が正しいのかもしれない。それも豪華な出演者で良質なJ-POPフェス。 しかし、ロックフェスを名乗っておきながらJ-POPフェスを作る姿勢は、ある意味ではロックだ。ロックへ対してのカウンターでもあると感じる。ロックに対する固定概念を壊している。。矛盾かもしれないが、ロックに対する反発にロックを感じる。 ロッキンの主催であるロッキング・オンの渋谷陽一社長は最終日の挨拶で岡崎体育を「ロックミュージシャン」として評価していることを話していた。 ロッキング・オン・ジャパン編集長の山崎洋一郎氏はでんぱ組.incの出演前の挨拶で「ロックフェスにアイドルが全然出演しなかった時にオファーを出して出演してもらい盛り上げてもらった。ロックとアイドルの架け橋になってくれた」と評していた。 もしかしたらロッキンは音楽的な部分だけでなく、精神性の部分でロックを感じるアーティストも揃えているのかもしれない。そう考えると出演者全員が「ロックミュージシャン」なのかもしれない。 とはいえ「ロック」がどういう意味なのかは人によって考え方も価値観も違うとは思う。明確な意味があるようでない言葉だ。Wikipediaに書かれていることが正解ではない。 そのため、ロッキンからはやはりロックを感じないという人も多いだろう。全然ロックフェスじゃないと思う人もいると思う。それは当然だ。 しかし、ROCK IN JAPANはロックではないという人に聞いてみたい。 ロックって何ですか?