オトニッチ

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【アルバムレビュー】KAT-TUN『CAST』ジャニオタじゃない男が書く感想とおすすめポイント

他のグループと違う?

 

自分はジャニーズの特定のグループのファンではない。そもそもグループ関係なくジャニーズのメンバー自体にはあまり興味がない。それは自分が男だからということもあるけども。

 

しかし、音楽自体は良いと思っている。以前から音楽には注目していて嵐や関ジャニ∞やセクシーゾーンなどのアルバムは聴いてみた。多くのファンがいる理由はメンバーのアイドル性やルックスだけでなく音楽の良さも理由の1つだとは思う。

 

KAT-TUNが4年ぶりにアルバムを発売すると知った。

 

18曲収録されているボリュームたっぷりな作品。それでいて中だるみもない。バリエーション豊かな楽曲が揃っている。 そして良い曲が揃っている。

 

しかし、自分がこれまでに聴いてきた他のグループの作品とは少し違うように感じた。

 

そう感じた理由を含めて全曲レビューしてみた。ちなみににメンバーについてはあえて一切触れていないレビューです。その代わり音楽の部分についてのみレビューしてみた。

 

 

1.DIRTY, SEXY, NIGHT

作詞:鈴木静那

作曲:Josef Melin

編曲:Josef Melin,兼松 衆

 

ホーンの音が印象的な楽曲。ビッグバンドの演奏に歌謡曲的なメロディを乗せた日本でしか聴けなそうな楽曲。楽器の演奏だけでなくコーラスワークも絶妙。

 

作曲はスウェーデンの作曲家のJosef Melin。嵐など他のジャニーズのグループにも楽曲提供をしている。スウェディッシュポップはメロディが美しい曲が多く、それがこの曲でも生かされているように思う。

 

編曲はドラマや映画の劇伴を主に行っている兼松衆。渡辺貞夫とセッションも行ったりとジャズピアニストとして主に活動していることもあり、ジャジーな編曲が得意なのかもしれない。

 

2.Ask Yourself

作詞:川口進・MiNE

作曲:MiNE・Marta Grauers

編曲:立山秋航

 

音数が多く壮大な曲かと思いきや歌が始まると落ち着いたアレンジになる。しかし、サビはストリングスも入り壮大に盛り上げる。JPOPの曲展開としては王道ではあるが、しっかり作り込まれてるので古さは感じないし聴いていて自然と盛り上がる。

 

打ち込みと生楽器の両方を使っている曲だが、主の使い方が絶妙。特にBメロでの音の使い方が絶妙で心地よい。

 

作曲は天才凡人で自身もアーティストとして活動しているMiNEとスウェーデンのミュージシャンのMarta Grauersの共作。そして女性アイドルやアニメソングへの楽曲提供が多い立山秋航。

 

王道のJPOPが感じるが少し違う新鮮さもある理由は王道ポップソングが得意な日本人とスウェーデン人の共作だからかも。

 

3.FIRE STORM

作詞 Atsushi Shimada

作曲:Tommy Clint、Atsushi Shimada,  

編曲:Atsushi Shimada

 

Atsushi Shimadaの作詞作曲作品。メンバーは違うものの2曲目に引き続き作詞作曲は同じ天才凡人。そのためか2曲目から3曲目への流れがスムーズに感じる。

 

打ち込みがメインのEDM。この曲はリズムが面白い。Bメロのリズムパターンはかなりシンプルなのに印象的に感じる。シンプルだからこそ気持ちよく踊れそうな感じ。少しずつリズムパターンが変わり音が増えていくのがかっこいい。

 

4.READY FOR THIS!

歌詞 KOMU

作曲:Takuya Harada、MiNE、Albin Nordqvist,

編曲:Albun Nordqvist

 

またもや作曲に天才凡人のメンバーであるMiNEがいる。作曲をMiNEと共作しているAtsushi ShimadaAlbin NordqvistはTWICEの「Wake Me Up」を作曲していることでも知られている。

 

Wake Me Up

Wake Me Up

  • TWICE
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

この曲もリズムパターンが面白い。様々な音をリズム楽器として使っている。そして、その使われている音が予想の斜め上を行く音を使っていたりと面白い。この曲の主役は歌よりもリズムではと感じる。

 

また、コーラスワークも凝っていてそこも聴きどころ。

 

5.Don't wait

作詞 イワツボコーダイ

作曲 GRP イワツボコーダイ

編曲 佐々木 裕

 

序盤のストリングとピアノの組み合わせが心地よい。全編にわたってストリングとピアノがいい仕事をしている。

 

特にサビのピアノは盛り上げるように弾くのではなく落ち着いて弾いていることご印象的。曲は盛り上がっているにも関わらず、落ち着いたピアノ。それがアクセントになっていて曲に個性を生んでいる。?

 

1番のサビの後のストリングスの盛り上げ方も良い。

 

編曲はAKBなどの女性アイドルソングやアニメソングを中心に行っている佐々木 裕。今作は女性アイドルやアニソンの制作に関わっている作家も多く参加している。そういった作家の作品を男性アイドルが歌うことにも面白みを感じる。

 

6.願い

作詞 Takuya Harada

作曲:YOUNG HOLLYWOOD、Takuya Harada

編曲:清水 哲平

 

この曲はアコースティックギターの音が印象的。アルバムの中でアコースティックギターが印象的に使われている曲はこの曲だけだ。

 

歌の出だしでは左からギターの音が流れで右からボーカルが流れる。ヘッドフォンで聴くと多少違和感があるかかもしれないが、スピーカーで聴くとこのバランスが心地よい。Bメロではギターの数が増えて曲に奥行きが出る展開も良い。

 

編曲はAKBなどの女性アイドルやアニソンを主に手がけている清水 哲平。

 

7.MoonLight

歌詞:Jovette Rivera、Maiko Kawabe

作曲:Jovette Rivera

編曲:生田真心

 

スパニッシュな雰囲気のギターが印象的。KATーTUNの曲は歌が始まると楽器の音数が減る曲が多いのだろうか。この曲も歌が始まると音数が減る。歌を聞かせることに重きを置いているようにも感じる。

 

この曲はサビのメロディが面白い。特に最後のメロディ。そこから2番に行く展開も個性的。

 

アメリカ人ながら日本で生活し日本語もペラペラのJovette Riveraが作曲。編曲はAKBの「ポニーテールとシュシュ」や「フライングゲット」など女性アイドルのヒット曲を多く手がけている生田真心。

 

8.One way love (亀梨和也のソロ曲)

歌詞:Komei Kobayashi

作曲:P3AK、Tony Ferrari

編曲:P3AK

 

エフェクトのかかったボーカルとかかってないボーカルのギャップが面白い。亀梨和也のソロ曲だがソロとは思えないほどボーカルが表情豊か。

 

落ち着いた曲だがバックのトラックがかっこいい。コーラスの音がダウナーな雰囲気を醸し出していて印象的。

 

9.Believe it

作詞:久保田洋司

作曲:KAY、イワツボコーダイ

編曲:CHOKKAKU

 

エレキギターのカッティングとホーンの組み合わせが心地よい。全編にわたってギターのカッティングが印象的でギターが主役とも思える曲。特にサビでは違うパターンのカッティングをしていて、サビではAメロやBメロとは違う流れにして印象的になるように工夫している。

 

編曲を行っているCHOKKAKUは超有名大物プロデューサーで、多くのヒット曲に関わっている音楽プロデューサーだが、もともとはギタリスト。そのためかギターが特徴的な編曲になっているのかもしれない。

 

10.vivid LOVE

作詞:hartog

作曲:Takuya Harada、King of slick

編曲:川端 正美

 

この楽曲はコーラスが印象的。80年代J-POPを感じるコーラスワークとメロディ。トレンドの音を多く取り入れている今作の中では異質なタイプの曲かもしれない。しかし、こういう曲がアルバムに入ることで良いアクセントになり全体がまとまる。

 

正統派のミドルテンポのJ-POPという感じだが、懐かしさもあり新しさもある。編曲は欅坂46の「大人は信じてくれない」を編曲した川端 正美。

 

大人は信じてくれない

大人は信じてくれない

  • 欅坂46
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

「大人は信じてくれない」の編曲は実験的な部分もある編曲でもある。様々なタイプの編曲ができる器用なタイプの音楽作家なので、 「vivid LOVE」でも曲に合った編曲で上手く楽曲をまとめたのだと思う。

 

11.ツイテオイデ

作詞:岡嶋 かな多

作曲:Christofer Erixon、Pius、J.Praize,

編曲:Pius

  

サビのバックトラックが印象的。サビのストリングスとサビの後半のコーラスとエフェクトのかかった声が良い。

 

サビ以外は打ち込みの音が印象的でダウナーな雰囲気。しかしサビにストリングが入ると華やかな印象になる。サビとそれ以外では違う印象があり、二面性のある曲。

 

サビ前の「ついておいで」の歌詞の後に印象がガラッと変わるのがカッコいい。曲名が「ツイテオイデ」になっている通り、やはりその部分が曲として要となる部分なのかもしれない。

 

12.World's End. (上田竜也ソロ)

作詞・作曲・編曲:Jovette Rivera、Maiko Kawabe Rivera

 

DragonAshの「LILY OF DA VALLEY」以前のアルバムの楽曲の雰囲気に近いものを感じるバックの演奏。これはバンドを付けてライブでパフォーマンスをしている音を聴いてみたい。

 

バンドの演奏がカッコいい。特にベース。動きの多いベースラインが良い。そして歪んだエレキギターが曲を色づけている。

 

洋楽ロック的なカッコよさもあるのに日本人の好みのツボを押さえているように感じるのはアメリカ人ながら日本の文化や音楽にも詳しいJovette Riveraが制作しているからだろうか。

 

13.Be alive

作詞:Laika Leon

作曲:King of slick、Laika Leon

編曲:原一博

 

12曲目の「World's End」からつながるようなロックを感じる歪んだギターが印象的な曲。かと思いきや打ち込みのリフもあったりする。その組み合わせが面白い。サビ前にドラム以外の音がなくな、サビはでは音数が増える。それによって盛り上がるような編曲になっている。

 

エグザイルや浜崎あゆみのヒット曲も手掛けた原一博が編曲をしている。原一博はロックやポップスからEDMまで幅広いジャンルの編曲をしている音楽プロデューサー。この曲にもその音楽性の幅広さが生かされているように思う。

 

14.Marionation

作詞:YUICHI NAKAMARU、Ami

作曲・編曲:原一博

 

EDMの楽曲だが、特徴的な部分は音数が少ないこと。しかし、それでもしっかり踊れる曲になっている。

 

ここ数年の海外の音楽シーンのトレンドは個人的に音数を絞ってその代わり使う音を洗練している楽曲が多いように思う。「Marionation」もそのトレンドを取り入れているように感じる。

 

しかし、メロディはキャッチーで覚えやすい。いい意味で海外のトレンドと日本のポップスを合わせたような作品。

 

編曲13曲目と同様に原一博。編曲者が同じだからアルバムとしうてもスムーズに流れている。

 

15.Brand New Me

歌詞:Ms.Mimosa

作曲:川口進、Fredrik Samsson

編曲:井上泰久

 

 作曲は多くのJ-POPやアニメソングなどを手掛けている川口進。良いメロディを書くメロディメーカーでもある作曲家。やはりこの曲もメロディがキャッチーで切なさもあって良い。 

 

天使にふれたよ!(映画「けいおん!」Mix)

天使にふれたよ!(映画「けいおん!」Mix)

  • 放課後ティータイム
  • アニメ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

音数が少なめでメロディの良さを引き立てるように曲は進んでいくが、サビは音数が増えて盛り上がる。コーラスの入るタイミングもる絶妙。

 

16.New Genesis

歌詞:ma-saya、Komei Kobayashi、Masaki Fujiwara

作曲:STEVEN LEE、Drew Ryan Scott、Tommy Clint

編曲:STEVEN LEE、Tommy Clint、高橋 哲也

 

映画音楽の様な壮大なオーケストラと打ち込みのドラムの組み合わせが面白い。曲の展開も編曲も凝っていて壮大。作詞も作曲も編曲も複数名での共作なのでそれぞれの作家の強みを生かした形なのだと思う。

 

編曲に携わっている高橋哲也は映画などの劇半も作曲している売れっ子作曲家。彼の影響も強く壮大な編曲になっているのだと思う。

 

17.Unstoppable

歌詞:HIKARI

作曲:King of slick、HIKARI

編曲:立山 秋航

 

こちらも出だしのストリングスが印象的。ストリングスを主張した壮大な曲かと思いきやキダーも入ってきたりと意外な展開が刺激的。

 

サビのメロディが面白い。3連符で畳がけるように歌うかと思いきや途中で切る。しかし、それが独特なリズム感を生んでいてい心地よい。

 

バックのトラックはサビでは派手に盛り上がっているのだがAメロやBメロはそれほど音数は多くない。しかし、歌のメロディはサビよりも音数が多い。歌とバックトラックのバランスを最初から最後まで取っていて、最初から最後まで飽きさせない曲に感じる。

 

18.アイノオカゲ

歌詞:村野直球

作曲:秋浦智裕

編曲:立山 秋航

 

落ち着いて始まるのかと思いきや激しいバンドサウンド。この曲はベースラインが印象的。とくにBメロのベース。2本のギターの絡み方もロックの王道的な編曲ではあるがカッコいい。

 

歌のメロディもキャッチー。作曲はアゲハスプリングに所属している秋浦智裕。愛勝などのアニメソングを手掛けている作曲家ユニットで疾走感がありキャッチーなメロディの楽曲を作ることが得意。

 

ちなみにアゲハスプリングスは蔦屋好位置や玉井健二など人気も実力もあるプロデューサーが所属している。関ジャニ∞の楽曲はアゲハスプリングスの作品と言ってもいいぐらい所属ミュージシャンが参加している。

 

18曲の長いアルバムながら中だるみせずに長さも感じない理由は最後に収録曲が爽やかなロックだからかもしれない。

 

 つかみどころがないのに名盤

 

自分はこれまでに嵐やセクシーゾーンなどのアルバムも聴いてきた。どちらのグループの作品もとても良いアルバムだったと思う。KAT-TUNの『CAST』もそれに引けを取らないぐらい良いアルバムだ。

 

しかし、嵐やセクシーゾーンと違うと感じる部分もある。それはアルバムとして「つかみどころがない」ように感じるのだ。

 

「つかみどころがない」と言うとマイナスのイメージがあるかもしれない。しかし、マイナスの意味ではない。『CAST』はアルバム全体を通して「これは〇〇な作品」と評価するアルバムではなく、純粋に良い曲をそろえたアルバムに感じたのだ。

 

去年発売された嵐の『untitled』は名盤だと思う。未完成な部分を突き詰めて挑戦するというコンセプトで10分を超える組曲に挑戦したりと、コンセプトに忠実に1つの作品として完成度が高かった。

 

しかし、KAT-TUNの『CAST』にはそのようなコンセプトを重視したまとまりは感じなかった。その代わり幅広いジャンルの音楽を取り入れ、純粋に良い曲やカッコいい曲をそろえているように感じた。

 

まとまりがないと書いたが、アルバムとしての流れはスムーズだし18曲というボリュームながら中だるみもしないし繰り返し聴ける作品になっている。その理由は作曲者や編曲者が同じ曲を並べられていることが多いからではと感じる。

 

例えば2曲目から4曲目までの楽曲には天才凡人のメンバーが参加していることで序盤にリスナーを引き込むように近い雰囲気の楽曲になっている。後半の17曲目と18曲目はどちらも立山秋航が編曲を行うことで綺麗に最後でまとまるようになっている。

 

つまり、様々なジャンルの良い曲がそろっているのにアルバムを気持ちよく聴ける流れも意識して1つの作品としてアルバムを作っているのだ。

 

一言でこのアルバムの感想をまとめると「この作品は音楽が好きな人にはどのジャンルが好きかは置いておいて一度聴いてもらいたい名盤」ということです。

 

ここまでメンバーのことは一切触れずに音楽の部分や楽曲を作ったミュージシャンについてのみ書いてきた。でも、最後に一言だけメンバーについて触れておこうと思う。

 

全然詳しくなかったので知らなかったのですが、KAT-TUNのメンバー、みんな歌が上手くて歌がかっこよかったです。この歌声が曲の魅力を確実に引き出しているのだと感じた。

 

自分は男だけど、いよいよKAT-TUNのせいでジャニオタになってしまうかもしれない・・・・・・。