2018-06-16 〈ライブレポ〉なぜthe pillowsは今になって19年前のアルバムを再現するツアーを行ったのか? ライブのレポート the pillows 19年前のアルバムを再現するライブ the pillowsは19年前に「RUNNERS HIGH」というアルバムと「HAPPY BIVOUAC」というアルバムを発売した。今回そのアルバム収録曲を全曲再現するライブが行われた。そのライブに行ったが、めちゃくちゃ良かったのだ。 会場Zepp Tokyo。約2800人収容する会場は即日ソールドアウト。 19年前のthe pillowsは今ほど評価されていたわけでも人気があったわけではないと思う。それにも関わらず今回披露されるアルバム曲は今でも多くの人に聞かれている作品で、その再現ライブを観たい人がこれほど集まっている。 そして、現在もバリバリ現役で活動しているバンド。ほぼ毎年新作アルバムを発表している。新作のツアーでも十分集客はできるバンドだ。 それにも関わらず、何故過去の作品を披露するツアーを行ったのだろうか。ボーカルの山中さわおは下記のように語っている。 懐かしがってくれる人も、追体験がやっと叶う人も楽しみにしててほしい。黄金期2作品全曲ライブなんて、当時だってやってないんだからさ。 引用:RETURN TO THIRD MOVEMENT! Vol.1 懐かしさに浸ったり追体験をしたいファンの期待に応えるということだろう。しかし、実際観たライブはその印象とは違うように思えた。 素晴らしいライブではあった。しかし、全然懐かしさも感じなかったし追体験した気分にならなかった。むしろ、メンバーもそんなことなど感じさせるつもりはなかったのではないだろうか。 RUNNERS HIGHでアウイエ(泣) ボーカルの山中さわおは事あるごとに「アウイエ!」と叫ぶ。それはCD音源でも確認ができる。これは山中さわおの鳴き声だと思ってもらって良い。演奏中もMCも事あるごとに「アウイエ!」だ。ファンもそれに応えるように事あるごとに「アウイエ!」と返す。 そして、山中さわおが「アウイエ!」と鳴く回数が多ければ多いほど、そのライブは名演になる。この日のライブは過去に類を見ないほどに「アウイエ!」が多かった。 特に「RUNNERS HIGH」収録曲の演奏中とMCは「アウイエ!」に溢れたパフォーマンスだった。 その中でもハイライトと言えるパフォーマンスは「NO SELF CONTROL」での演奏だ。 NO SELF CONTROLthe pillowsロック¥255provided courtesy of iTunes 「NO SELF CONTROL」はthe pillowsの作品中で最も「アウイエ!」成分が多い。楽曲中で17回「アウイエ!」と叫んでいる。 この楽曲はミドルテンポのオルタナティブロック。そして泣きメロ。泣きメロに山中さわおの「アウイエ!」の叫びが乗り、エモーショナルになっていく。感情が動かされたファンも一緒に「アウイエ!」と叫び泣く。 「アウイエ!」で繋がるエモーショナルなライブはthe pillowsでしか体験できないライブだ。 改めて「RUNNERS HIGH」の収録曲を聴いてみると、少し暗い曲や切ないメロディや演奏の楽曲が多いことに気づく。 ライブでの切なさは音楽の切なさを超えていた。それは生演奏での感動のせいだけではなく、バンドの技術や表現力が上がっているからではと感じる。 HAPPY BIVOUACでアウイエ♪ 改めて「HAPPY BIVOUAC」収録曲の演奏を聴くと明るい曲調やライブ映えする楽曲が多い事に気づく。アルバム名を日本語訳すると「幸せな野宿」。タイトル通りにハッピーになれる楽曲が多い。 その中でも特にライブだからこそ魅力が増す曲がある。それは代表曲の1つにもなった「Funny Bunny」だ。 Funny Bunnythe pillowsロック¥255provided courtesy of iTunes ライブだとCD以上に重い演奏になり、特にギターの音が印象的。サビではファンが合唱し、ついでに「アウイエ!」と叫ぶ。 この楽曲は、まさに「ライブによって進化した楽曲」だ。 他にも「Advice」や「LAST DINOSAUR」が演奏された時のフロアの沸き方は無意識に山中さわおもファンも「アウイエ!」と叫んでしまうほどに盛り上がる。 Advicethe pillowsロック¥255provided courtesy of iTunes 「HAPPY BIVOUAC」の収録曲は音源での「アウイエ!」成分は少ない。しかし、ライブでは「アウイエ!」成分が5割増しになり、より魅力的に楽曲が伝わるのだ。 その未来はアウイエ! 冒頭にも書いた通り、素晴らしいライブだった。しかし、懐かしさも当時の追体験をしたという感覚も全くなかった。良い意味で「いつも通りに最高でアウイエなピロウズのライブ」だった。 the pillowsは現役バリバリのロックバンドだ。懐メロバンドではないし今年も新作アルバムを発売予定だ。 MCでは昔を懐かしむ話は殆ど行っていなかった。 話した内容は、アメリカツアーを日本よりも大きな規模で行うことや、アルバム発売や次のツアーの話など。未来の話ばかりだった。 その話を聞いたファンは喜びの歓声として「アウイエ!」を叫ぶ。 過去作の再現を終えたアンコールでは、the pillowsにとって最新の楽曲が披露された。そのクオリティは過去の楽曲と比べても遜色はない。山中さわおも変わらずに「アウイエ!」している。 ファンも過去の楽曲と同じように最新の楽曲でも盛り上がり「アウイエ!」と歓声が上がる。もしかしたら最新曲を演奏したアンコールの方が盛り上がっていたかもしれない。 the pillowsは過去の楽曲を聴いて懐かしんで欲しかったわけではないのかもしれない。過去作を演奏することで、より浮き彫りになるバンドの魅力を観せたかったのではないだろうか。 ファンの求めるアウイエ♡ そして、ファンの求めているthe pillowsも昔のthe pillowsではない。今のthe pillowsだ。 19年前からthe pillowsは進化した。それは音楽性の幅も技術も。人気や知名度も上がった。そんなバンドが過去の作品を今のライブでどのように表現するかを観たいのだ。 そして、バンドはそれに応えるように「今のthe pillows」として19年前の作品を見事に再現した。いや、再現というよりも再構築かもしれない。それほどに音源を超えた素晴らしいライブだった。 全てのファンがそういう気持ちではないかもしれない。しかし、会場にいた殆どのファンが同じ気持ちだったのではと思う。その根拠もある。最新アルバム発売とツアーの発表がされた時の歓声とアウイエの大きさが根拠だ。 今回の再現ライブに行って本当に良かった。それはライブで聴くことで過去の作品の魅力をより感じることができたとともに、今後のピロウズへの期待もより強くなったからだ。 これからもピロウズは心の底からバスターズが「アウイエ!」と叫べる活動をしてくれるだろう。 ちなみに、ピロウズを知らない人にも一度はライブを観て欲しい。来年で結成30年を迎えるベテランで現役のバンド。素晴らしいライブを見せてくれるはずだ。 曲の予習をしなくても、1曲も知らなくても楽しめる。山中さわおが「アウイエ!」と叫べば自然と自分の口からも「アウイエ!」が飛び出すはずだ。 HAPPY BIVOUAC アーティスト: the pillows,山中さわお,吉田仁,鈴木淳 出版社/メーカー: キングレコード 発売日: 1999/12/02 メディア: CD 購入: 2人 クリック: 26回 この商品を含むブログ (92件) を見る RUNNERS HIGH アーティスト: the pillows,山中さわお,鹿島達也 出版社/メーカー: キングレコード 発売日: 1999/01/22 メディア: CD 購入: 1人 クリック: 19回 この商品を含むブログ (73件) を見る