オトニッチ

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sora tob sakanaの「alight ep」を聴いたら不安を感じた

完成度の高いEP

 

今のアイドルシーンて音楽好きからしても面白いことになってるんですよね。

 

例えば男性アイドルなら嵐が10分を超える組曲を発表したり、w-inds.が海外の最新のトレンドの音を取り入れてJPOPに昇華したりと。

 

女性アイドルに関してはもっと混沌として面白くなっている。アイドルと言っても音楽のジャンルは様々になっているし、音に凝っているアイドルは当たり前になった。

 

むしろ、売れたり評価されているアイドルは「曲やライブが良くて個性的なこと」が売れている大きな理由の1つになっている。ルックスよりも曲に注目されることが増えている。

 

売れているアイドルのファンに話を聞くと、絶対にこのように答える。

 

「うちのグループは曲がいいからね」

「うちのグループはパフォーマンスが良いからね」

 

これを言わないの、AKB48のファンぐらい。求めているものが違ったりするから。

 

そんな今の女性アイドルシーンで、特に曲が良いし個性的だと注目されているグループがある。

 

sora tob sakanaというグループ。5月にリリースされたミニアルバム「alight ep」でメジャーデビューしたばかりのグループ。

 

このメジャーデビューEPがとても良い。インディーズの頃から曲が良かったのだが、そのころの方向性をさらに深め、より魅力的な音楽になっていると思う。

 

しかし、この作品、聴いていると不安になってくる。何が不安になってくるかと言うと、今後の女性アイドルシーンに面白みがなくなるんではないかという不安。

 

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インディーズ時代から高いクオリティ

 

自分がsora tob sakanaを知り興味を持ったのはライブでのパフォーマンスを観てだ。そのライブで1曲目に披露された曲は「広告の街」という曲。下の動画の曲だ。

 



明らかに序盤から一般的なアイドルソングとは違う。BiSHをはじめとしたロックを歌うアイドルも増えているが、それらよりもよりマニアック。このインパクトのあるバックトラックで一発で興味を持った。

 

しかし、アイドルグループだからこそ歌える曲でもあると思う。序盤でメンバーは全員1文字言葉を発するだけで次のメンバーに代わる。メンバー1人が一文字しか言葉を発していないのに歌として成立している。これは複数人数いるアイドルグループでなければできない。

 

sora tob sakanaのプロデューサーはポストロックバンドのハイスイノナサのコンポーザーでもある照井 順政だ。ハイスイノナサはポストロックというマニアックなジャンルで歌のない インストゥルメンタルをやっているバンド。しかし、その界隈では実力派として知られているバンド。

 

そんなマニアックな音楽を女性アイドルが歌うとポップさが加わり、また違う魅力が生まれる。

 

そして、メジャーデビューしてもその魅力は変わっていない。いや、むしろ洗練されてより魅力的にも感じる。

 

音楽ファンを唸らせるアイドルソングとしての完成形

 



上の動画はメジャーデビューEPの「alight ep」に収録されている「Lightpool」という曲だ。

 

インディーズ時代の楽曲と同様に演奏は一般的なアイドルソングとは違うし、ヒットチャートの上位にあるヒット曲とも違う方向性だ。しかし、きちんとアイドルソングとして成立しているし、音楽としてもクオリティが高く聴きごたえがある。

 

インディーズ時代から方向性は変わっていないと思う。しかし、音はより洗練されている。音数は増えていて、その音も楽曲の魅力を射より引き立てるための必然性を感じる。確実に進化している。

 

以前までは「ハイスイノナサの曲に歌を乗せた」と感じるような曲もあった。歌がなくてもインストで成立しそうな曲もあった。

 

しかし、「alight ep」の収録曲から、それは感じない。「sora tob sakanaの音楽」になっている。歌が乗らなければ成立しないとも思うし、歌が乗るからより魅力的になっているのだとも思う。 

 

アイドルソングとして成立するギリギリのライン

 

曲の構成や編曲や歌詞などだけ取ると、一般的なアイドルソングではない。複雑な構成や編曲だし、アイドル的な可愛らしさがあるわけではない。普通に考えたらアイドルに提供する曲ではないかもしれない。

 

それでもギリギリアイドルソングとして成立している。

 

ボーカルはアイドル。まだあどけなさを感じる不安定なボーカル。決してうまいわけではないが、アイドル的な可愛らしさはある。オサカナちゃんたちのボーカルによってアイドルソングとして成立しているのだ。

 

しかし、 これ以上曲が複雑で難解になったり、よりマニアックな方向へ行ってしまうと、それはアイドルソングとしては成立しなくなるかもしれない。アイドルがわき役になってしまう。どれだけ曲が良くても、アイドルソングの主役はアイドルだ。クリエイターがそのバランスを保ちつつ作曲や作詞で表現することがアイドルの面白さだと感じる。

 

これ以上マニアックな方向や複雑な方向へ舵を切ったら、グループとしての魅力がなくなってしまうのではと不安に思う部分もある。メジャーデビューしても多くの人に聴かれるのではなく、一部のニッチな需要を満たす音楽になってしまう可能性もある。

 

今のsora tob sakanaはアイドルソングとして成立するギリギリのラインだと思う。マニアックな音楽ファンにも評価され、きっかけさえあれば多くの人に受け入れられそうな音楽になっていると思う。絶妙なバランスを保っている最高のクオリティだと感じる。

 

 きっとそんな心配などいらない素晴らしい作品を今後も作ってくれるとは思うが、期待とともに少しの不安もあるのだ。 

 

アイドルこそ最先端を目指そうとしている?

  

バンドで対バンライブがあるように、アイドルも対バンライブがある。対バンライブで刺激を受けることでライバル関係になったり、お互いに高めあい、成長していく。それはバンドもアイドルも同じだと思う。

 

しかし、バンドとアイドルの対バンでは一部違う部分がある。バンドは近い音楽ジャンルで対バンすることが多いが、アイドルは関係ないことが多い。ロックを歌うアイドルも正統派アイドルもイロモノアイドルも同じステージに立つ。

 

その中で他のグループに負けないようにするには、「新しさ」も重要になってくる。

 

 アイドルの楽曲を制作する人たちは才能に溢れている人も多いと思う。自らアーティストとしてステージに立ち表現する代わりに、アイドルをプロデュースすることで自らの音楽を表現している人も少なくはない。

 

そんなアーティストが「新しさ」を求めて楽曲を作る。それは、もしかすると日本で最も最先端ともいえる音楽になるかもしれない。それはリスナーとしても面白いし、期待をしてしまう。

 

しかし、それがマニアックな方向や難解な方向に行き過ぎて、客が置いてけぼりになる危険性も感じる。

 

そうなったとき、アイドルシーンは盛り下がってしまうのではと不安に感じる時もある。現在、様々な魅了的なグループや面白いグループが登場しているのに、盛り下がってしまうのは勿体ない。

 

つまり、アイドルの楽曲に関わる人たちは様々な方向から、「アイドルソングとしてギリギリ成立するライン」の曲を作ってほしいなと思うわけです。sora tob sakanaのようにね。