オトニッチ

ニッチな音楽情報と捻くれて共感されない音楽コラムと音楽エッセイ

back numberが嫌い ~バンドが売れた理由を考察~

自分のことではないです

 

ここ最近「back numberが嫌いだ」という内容の個人のブログやネット記事を何件か見つけた。ここ数年で頭角を現したバンドでは最も売れているであろうバンド。ファンも多いがアンチもいるだろう。ビートルズにすらアンチがいるわけだから。

 

で、それらを読んでみたんです。嫌いか好きかは個人の好みだからどうでもいいんですよ。でも、気になったことがある。「back numberが売れた理由がわからない」と書いてある記事があったことだ。マジかと。普段J-POPや邦楽ロックを聴く人ならば、back numberはデビュー当初から「これは売れる」と思っていた人が殆どだったと思ってたんですよ。売れるべくして売れた音楽だなあと。ところがそうではないらしい。

 

ちなみに、自分はback numberのことは嫌いではない。清水依与吏よりも清水翔太の方がイケメンだと思うし、清水アキラの方がモノマネが上手いとは思うけども。あと、いっくんってあだ名はELTの伊藤一郎のものだ。依与吏をいっくんと呼ぶな。

 

でも、back numberには音楽の好みとボーカルの髪の毛を切ってやりたいという想いは置いておいて、認めざるを得ないセンスと才能があると思うわけです。

 

 

隙の無い音作り

back numberが売れた理由の1つに音作りや編曲が影響しているかと思う。メジャーデビュー当初から他のロックバンドとは違う方向の音作りをしていたように感じる。

 

デビュー曲からJ-POPシーンのど真ん中を狙ったような音作りなのだ。メンバー以外の楽器の音も積極的に入れている。デビューしたばかりのバンドは”自分たちの音”だけで勝負したがるバンドが多いように思うが、back numberはそのあたりは柔軟なのかもしれない。

 

花束

花束

  • back number
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

2枚目のシングル曲で知名度をあげるきっかけになったヒット曲である『花束』。2枚目のシングルにしてピアノなどメンバー以外の楽器の音を大胆に取り入れた楽曲。しかしギターの音もしっかり聞こえるのでバンドであることがわかる編曲。音源のミックスバランスが良い。

 

編曲はいきものがかりや秦基博やaikoなどJ-POPシーンの中心で活躍したアーティストの編曲やプロデュースをしていた島田昌典。実力もある有名音楽プロデューサーだ。そのためか、デビューしたばかりのバンドとは思えないほどにポップスとして音が作りこまれている。

 

メジャーデビューアルバムの『スーパースター』もバンドのデビューアルバムとは思えない。バンドのデビュー作と言えば、初期衝動の荒々しさや勢いがあるが、これにはない。作りこまれている。

 

 

 もしかしたら最初からロックシーンで活躍するバンドでははく、J-POPシーンで多くの人に届く音楽をやるバンドを目指そうとしていたのかもしれない。ボーカルの清水依与吏はミスチルや槇原敬之や桑田佳祐に影響を受けたらしく、それも関連しているかもしれない。

 

最初からJ-POPを聴くリスナーを狙ったかのような音作りは、多くの人に受け入れられやすいかと思う。

 

 

童謡のようなメロディと素直な構成

 

back numberってメロディがとても素直なんですよ。最近のバンドってサビが三連符繰り返したり、早口なAメロとか大好きじゃないですか。そういうメロディって若者に受けるメロディでインパクトはあると思う。back numberにはそれがないんですよ。RADWIMPSの「前前世から僕は~♪」程度の速さのメロディすらない。

 

back numberのメロディって童謡のようなメロディなんですよ。 童謡のメロディって、歌詞を読み上げたときの言葉のイントネーションや発音と、歌ったときのメロディとで同じ部分や近い部分が多い。例えば、童謡の『ぞうさん』。これも歌詞を読み上げた後に歌を聴いてみると、どことなく読み上げた時のイントネーションと歌のメロディで重なる部分が多いかと思う。

 

ぞうさん

ぞうさん

  • はいだしょうこ
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

会いたいんだ今すぐその角から

飛び出してきてくれないか

夏の魔物に連れ去られ

僕のもとへ

(高嶺の花子さん)

 

 上記の歌詞はback numberの代表曲の『高嶺の花子さん』のサビの歌詞だ。この歌詞を読み上げた後に音源を聴いてもらいたい。

 

高嶺の花子さん

高嶺の花子さん

  • back number
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

どうだろう。ジャケットの顔が怖いだろう。どことなく読み上げたときの言葉のイントネーションと歌のメロディに近い部分があるかと思う。この童謡的なメロディや言葉のイントネーションに近いメロディに「どこかで聞いたことがある」という親近感を感じ、印象に残り覚えてしまうのではと思う。そして、こういったメロディを世間ではキャッチーなメロディと呼ぶのかもしれない。

 

曲よりも詞を先に作る方法で歌を作ると、このようなメロディになりやすいかと思う。ボーカルの清水依与吏が影響を受けたと公言している槇原敬之は、必ず歌詞を先に書くらしい。back numberの作詞作曲方法についての順番はわからないが、槇原敬之に影響を受けたことでこういったメロディを書くことができているのではないかと思う。

 

 

状況を説明する歌詞

 

水色に

はなびらの浴衣が

この世で一番似合うのは

たぶん君だと思う

よく誘えた泣きそうだ

(わたがし)

 

上記は人気曲『わたがし』の歌詞のAメロのフレーズだ。序盤から情報量が多い。浴衣というフレーズから季節は夏でお祭りや花火大会に出かけていることがわかる。しかもその浴衣は”水色にはなびら”と細かく説明されている。その後の”よく誘えた 泣きそうだ”というフレーズから初めてのデートであることや勇気を出して誘った主人公の心情までわかる。

 

 聴き始めて10秒以内にどのような内容の歌なのか理解できてしまうのだ。そして状況説明とともに主人公の心情書かれているので、感情移入もしやすい。また、Aメロ以外も説明のような歌詞もある。これは『わたがし』に限らず他の曲でもこのような歌詞構成は多い。(高嶺の花子さんや日曜日など)

 

ここまで多くの情報量をワンフレーズに詰め込むことは、簡単なようで難しいことだと思う。リスナーの歌詞の意味の受け取り方を限定させてしまうが、多くの人に届く歌詞という意味ではback numberの大きな強みではと思う。

 

わかりやすさや共感しやすさ、感情移入のしやすさに関しては同世代の中で頭一つ抜けていると思う。

 

 

なんか引っかかるサビ

 

雪がきれいと笑うのは君がいい

(ヒロイン)

 

上記は『ヒロイン』のサビの歌詞だ。意味は伝わるが、よく読むと日本語としておかしい。「雪がきれいだねと会話して笑いあう相手は君がいい」という意味だが、意味が伝わるギリギリまで言葉を削っている。そのため少しの違和感があり、耳に残る。それでも意味は理解できるので共感する人も出てくるのだろう。

 

売れるためには、まずは聴いてもらったり興味を持ってもらう必要がある。聴いてもらうためのきっかけを作ることがback numberは上手い。

 

真夏の空の下で震えながら

君のことを考えます

(高嶺の花子さん)

 

 真夏という蒸し暑い季節に対して、寒さを表現する際に使う震えるという表現を使っている。こういった矛盾した表現も引っかかる。これは西野カナが会いたくて震えるのと同じ状況かもしれないけど。

 

売れているアーティストはこういった矛盾した表現を使うことが多い。ブルーハーツが汚いイメージのドブネズミに対して「ドブネズミみたいに美しくなりたい」と歌ったり、サザンが「マイナス100度の太陽みたいに」と歌ったりと。竹原ピストルも「俺の言うことを聴いてくれ。俺を含め誰の言うことも聴くなよ」と歌ったことでヒットして紅白にも出演した。

 

歌詞の矛盾に気づくことで突っ込みたくなり、矛盾しつつもその理由や気持ちを理解したり共感することで興味をもつようになる。そして、back numberはこういった表現をメディアで紹介されやすいサビの歌詞で使うことが多い。

 

これでもかと言うぐらい、初めて聴いた人に興味を持ってもらえるような仕掛けがされているのだ。

 

本人は何も考えていないかもしれない

 

以前はかなり戦略的に楽曲を作っているのではと思っていた。しかし、そうではないのかもしれない。何度かフェスでライブを観たことがあるのだが、ライブを観て確信した。

 

この人たち、戦略なんて考えていない。

 

ライブで「自分たちはロックバンドです!」とか「いくぞおおおお」とシャウトして、どれだけ激しいロックチューンを演奏するのか思ったら、そのあとに歌うのはバラード。Dragon Ashかと思うMCをした後にこれだ。演奏や曲の良し悪しは置いといて、ずっこけそうにはなる。それもある意味では”興味を持つきっかけ”の1つかもしれないが。

 

つまり、何も考えていないのだ。ただ自分たちが好きな曲ややりたい音楽を追求した結果、自然とキャッチーな売れ線な楽曲になったのかもしれない。MCも思いのまま後先考えずにシャウトしているのかもしれない。

 

そんなメンバーの天然な人間性やキャラクターも人気の理由であり、一部に嫌われる理由なのかもしれない。

 

 

売れた理由と嫌われる理由

 

このように、back numberは多くの人に”知ってもらうきっかけと興味を持ってもらう仕掛け”を作ることが上手かったから売れたのではと思う。それはメジャーデビュー当初からそうだったと思う。一貫している。

 

不特定多数の人に知られる機会が多ければ、好かれることもあれば、嫌わることも増えるだろう。その理由は様々だと思う。明確な理由がある人もいるだろうし、なんとなくだったり、生理的に無理という人もいるかもしれない。

 

しかし、嫌う人が増えれば増えるほど、back numberがバンドとして個性があることを示すことにもなるのではと思う。知られる機会や興味を持たれる機会がなければ、嫌われることもない。むしろ、嫌いと思わせるほどのエネルギーを持っているとも言える。バンドに限らず、人気商売は「誰にも知られずに注目されないこと」が最も悲しいことだから。

 

そろそろ最初のテーマに戻そうと思う。「back numberが売れた理由がわからない」という意見について。それは第一印象で生理的に嫌いになって曲を聴いていないか、自分と違う意見は認められないという人なのかなと思う。売れた理由がわからないと言っても、実際に売れているならば何か理由があるはずだ。それを探したり考えるのも面白かったりすると思うんだけどね。

 

ちなみに、個人的にback numberでどうしても気にくわないことがある。それは、あの見た目で女子にキャーキャー言われていることだ。あの見た目のくせに普通に高嶺の花子さんと付き合っちゃいそうな雰囲気醸し出しているところがムカつく。あと、左手の位置。見えないネクタイでもいじってるのか。それと右手をポケットに入れているところとアゴ髭とドヤ顔も。両端の2人は右下が気になって仕方がないのか。何がある右下に。

 

なんか、写真を見ていたら少しイラついて来た。もしかしたら、自分もback numberが嫌いかも。

 

 

関連記事:WANIMAが売れた理由はやっている音楽がJ-POPだから - オトニッチ-

関連記事:back numberとフジファブリックは似てる‐高嶺の花子さんと花屋の娘の歌詞の意味を考察と解釈‐ - オトニッチ-