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イエモンは東京ドームでロックバンドのライブをやらなかった【ライブレポ】

ついに観ることができた

 

自分にとって特別なバンドの1つである、THE YELLOW MONKEY。しかし、リアルタイムでは殆ど知らなかった。それでも様々な思い出も思い入れもある。

 

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2017年12月10日、初めて生でイエモンを観た。東京ドームでのライブだ。自分の人生においてイエモンのライブを観ることは絶対にない出来事だと思っていた。自分が好きになった時には活動休止していた訳で、どれだけ好きでも一生イエモンを生で観ることはできないことだと思っていた。

 

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だからこそこの公演は感慨深かったし感無量だったし大袈裟かもしれないけど、生きてて良かったとさえ思えた。

 

しかし、実際にイエモンをこの目で観たのにライブを観たという感覚がなかった。東京ドームで観たライブは今まで自分が観てきたアーティストとは全く違う感覚で観ていて、全く違う感情が生まれた。

 

THE YELLOW MONKEYが東京ドームで行った公演はロックバンドのライブではなかったのだ。

 

 

 遠すぎる存在

 

自分がアーティストやバンドのワンマンライブで東京ドームほどの規模の会場でライブを観ることは初めてだった。5万人の観客がいる会場。開演前から人の数と熱気に圧倒された。

 

ライブは開演予定時刻ちょうどに始まった。夢のようだった。5万人の歓声とそれに負けない演奏。そしてバンドの5万人を惹きつけるようなオーラ。現実の出来事ではないように感じた。再集結して活動再開しても”伝説のバンド”と思っている部分があったからかもしれない。夢見心地で演奏する姿を観ていた。

 

自分の席はスタンド席だったが、花道の中心は近い位置にあった。花道の中央にメンバーがいれば表情もわかるぐらいの距離。それなのに遠い存在に感じた。自分が今まで見てきた他のバンドのライブでは近くで観れば観るほど、アーティストの存在を近くに感じ、同じ空間を共有しているように感じた。

 

しかし、イエモンからはそれを感じなかった。かこよすぎるんだ。演奏する姿もバンドが醸し出すオーラも。近くで観れば観るほど、イエローモンキーというバンドがモンスターバンドであると感じた。それほど圧倒的な存在に思えるのに、バンドからファンへの愛情を感じるようなMCもあり、ファンからもイエモンやイエモンの音楽を愛してるんだろうなという温かな空気も感じた。イエモンは多くの人達に愛されるロックスターであると思えた。

 

吉井和哉のソロのライブは何度か行ったことがある。そこでイエモンの曲をパフォーマンスしている姿を観たことがある。しかし、ソロのライブではここまでの圧倒的な存在感は感じなかった。もちろんソロでも素晴らしいパフォーマンスだが、他の誰にも勝っているような圧倒的なスターだと感じたのはイエモンが初めてだった。

 

これがバンドマジックというもので、バンドである必然性なのかもしれない。

 

ド派手な演出

映像や照明など、ライブの演出もかなり凝ったものが多かった。大がかりなセットだったしあちこちが光るし、お金もかかってそうな派手な演出も多かった。ド派手で少しダサい演出が畳がけるように続いた。曲によってはストリングスやホーンなどメンバー以外のミュージシャンも交えて演奏をしていた。それにより曲もライブも華やかになっていた。

 

しかし、どれだけ派手な演出をしても、どれだけサポートミュージシャンが華やかな演奏をしても、一番目立っていて派手で華やかだったのはイエモンのメンバーだった。

 

もしも他のアーティストならば、ステージの演出の凄さに圧倒され、そちらに注目してしまうような派手で華やかな演出にも感じた。しかし、5万人を収容する大会場でイエモンのライブに見合う演出はド派手でなければいけなかったのだろう。その派手で華やかな演出はイエモンの魅せるパフォーマンスとのバランスもきちんととれていたように感じる。

 

ライブではなかった

 イエモンのライブの1週間前、サンボマスターのライブへ行ってきた。このライブも素晴らしいライブだったが、イエモンのライブとは正反対とも言えるステージだった。

 

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演出はかなり地味で小さなライブハウスと殆ど変わらない。スクリーンもないし照明もシンプル。しかし、始まった瞬間に8000人が1つになった。武道館がライブハウスのような熱気と歓声で包まれた。

 

ライブハウスでの公演がメインの普段のサンボマスターと比べるとステージまでの距離はある。それでもサンボマスターを近くに感じた。観客が1つになったように感じた。バンドと他のファンと音や空間を共有する喜びや楽しさがあった。

 

個人的な感想ではあるが、それは東京ドームでのイエモンとは真逆にも感じた。演出は派手だしスクリーンも多用していた。イエモンの生のステージを観れば観るほど遠い存在に感じた。自分と同じ人間とは思えないような凄い人が目の前に存在しているのを観るような感覚。

 

ライブ中も客が1つになっているというよりも、盛り上がってる他のお客さんも含め、自分1人でステージ全体を眺めているような感覚。それは一体感がないというわけではなく、ただただ圧倒されて夢を見ているような感覚。

 

サンボマスターのライブはアーティストを身近に感じ、自分もライブに参加することで元気を貰え本気で楽しみ、それに感動するようなライブだった。

 

それに対してイエモンはアーティストに物理的に近づくほどそのカリスマ性やオーラの凄みを感じ、参加するというよりも、メンバーのパフォーマンスやその他の演出も含めて魅せられ圧倒させられ、それに感動する公演だった。

 

自分が今まで行ったライブはサンボマスターのようにアーティストや音楽を身近に感じるものが多く、音楽を身近に感じそれに感動するものを「ライブ」だと思っていた。イエモンのような最初から最後まで魅せられるライブは初めてだった。

 

つまり、自分にとってイエモンはライブではなくそれとは違う圧倒され感動する「何か」に感じた。そのステージは「ライブ」ではなく他の呼び方があるのではと感じた。

 

エンターテイメントでもない

 

ライブでなければ何なのか。自分の中で言葉を当てはめるとしたら、「ショー」という言葉かと感じた。「ショー」という言葉を辞書で調べると、下記のように書いてある。

 

ショー(show)

舞台芸能などの見世物。特に、音楽・舞踊を中心とした、視覚的要素の強い芸能。

 

THE YELLOW MONKEYのライブは派手な演出も多く視覚的要素が強かった。「ショー」と言うとエンターテイメントの要素が強いようなイメージがある。しかし、イエモンのライブがエンターテイメントかというと、それもまた違うように思う。

 

イエモンの魅せ方は全員を楽しくさせ笑顔にするような平和で多幸感に溢れたものとも少し違うように感じる。もちろんそういう部分も含まれてはいるとしても、それ以外の要素も公演のハイライトとしていくつもあった。

 

イエモンは「ロックバンド」として5万人を魅了したのだ。

 

例えばセットリストがロックスターや悲しきASIAN BOYSのような明るい曲ばかりならばエンターテイメントかもしれない。しかし、ダウナーでプログレ要素も含んでいる演奏時間が約9分天国旅行や、メッセージ性の強いJAMなどの曲も演奏されている。演奏で魅せる姿は紛れもなくロックバンドだったし、感情的に演奏し歌う姿もロックバンドだった。

 

JAMの後半は演奏がが走り気味になっていた。曲の前半と比べると明らかにテンポが速くなっていた。しかし、その感情的な演奏がエモーショナルで圧倒され感動した。それはエンターテイメントとして楽しませることを考えての演奏とはちがった。楽しませるのではなく音楽を伝えようとしているように感じた。魂を込めてメンバーは演奏を行い、客はそれを受け止める。そこにはバンドとファンとの間の絆や愛情を感じる瞬間でもあった。

 

イエモンはロックバンドとして「ショー」を行ったのかのしれない。イエモンが行ったのはエンターテイメントショーではなく、ロックンロールショーという表現が近いかもしれない。

 

 しかし、ロックンロールショーという表現も少し違うような気もする。

 

THE YELLOW MONKEYのショーとは?

 

ライブのMCで吉井和哉は「これこらTHE YELLOW MONKEYは今まで日本に居なかったようなバンドを目指します」と話していた。既に今まで日本に居なかった存在になっているバンドがこんなことを話すのだ。いったいイエモンはどれだけ凄い存在になろうとしているのだろうか。

 

そんなバンドにロックンロールショーなんてありきたりな言葉は似合わない。では何と呼べば良いのだろうか。

 

イエモンの東京ドーム公演は愛にも溢れていた。バンドとファンの間でLove Communicationが成立し、そらによって公演中はバンドもファンもスパークしていた。

 

愛に溢れた空間で聴くロックスターの演奏と夢のような凄い演出。この愛に溢れたショーはLove Love Showと呼ぶべきではないだろうか。

 

それにしても、まだイエモンを生で観てから数日しか経っていないのに、こんな夜はイエモンに会いたくてという夜が続いている。早くまたライブやってください。