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サンボマスターの日本武道館が貧相な演出とステージセットだった理由【ライブレポ】

ミラクル起こして伝説作りました

 

サンボマスターの日本武道館公演。

 

とても素晴らしかった。セットリストもパフォーマンスも文句のつけようがない。来場したお客さん全員が心の底から楽しめたんじゃないかと思う。

 

だって、終演後駅へと向かうお客さんの顔がみんな笑ってたから。

 

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しかし、サンボマスターの日本武道館公演は他のバンドやアーティストの武道館公演とは違う部分もあった。

 

当然アーティストによって違いがあるのは当然だが、その違いがサンボマスターは顕著だった。

 

それは、ステージにお金をかけてなさそうなところだ。

 

8,000人の集客があったにも関わらずスクリーンはない。豪華なセットも演出もない。ライブハウスと同じようなステージセット。経費が足りなかったのかなと心配になるぐらいに。

 

悪く言えばしょぼいステージセットと演出。しかし、これには意味もあった上でそうしたのではとも思う。

 

武道館でこのステージでライブを行ったことで、他のアーティストの武道館公演とは違う感覚で観ることができ、違う余韻が残るようなライブになっていたのではと感じる。

 

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スクリーンは必要だったのか?

 

自分が過去に観た武道館でのライブで、スクリーンがないライブを観たのは初めてだった。ステージには楽器や機材が置かれているだけ。

 

正直、ライブ開始前には少しがっかりもした。シンプルすぎるステージ。アリーナの特別感はあまりない。

 

しかし楽器を弾く手元は観たくても、別にサンボマスターの顔を大画面で観てもなあと思ったりしもた。

 

そして、スクリーンがなかったことはサンボマスターのライブにおいては正解だったのかもしれない。

 

サンボマスターは自分達が演奏しているステージを観て欲しかったのではと思う。

 

大会場で演出が派手だったりスクリーンがあると、ずっと演者のいるステージを客が観ているかというとそういうわけではない。

 

演出があればそっちに注目する。席がステージから離れていればスクリーンを観ることも増える。

 

それはそれで楽しめるし、それによってライブのクオリティや満足度が上がる場合が多い。むしろ一般的にはその方が楽しめるライブになる。しかし、客がライブ中に同じ方向を観ているかというとそういうわけではない。見ている方向はバラバラだったりもする。

 

サンボマスターは武道館でもスクリーンを設置しなかった。それによってアリーナ最前席もスタンド2階最後列もステージを観ることになる。全員が同じ方向を観るのだ。

 

それによってライブハウスと同じような一体感が生まれ、8000人居た指定席の会場でもライブハウスと同じような盛り上がりになったのではと思う。

 

ステージにいたのは3人だけではない

 

ライブ中のMCでは何度も「最高のライブできる人!?」「伝説作れる人!?」などと客に呼びかけていた。

 

「最高のライブをやります」と宣言するのではなく、「最高のライブをやろう」と客に呼びかけているのだ。

 

よくライブは演者だけでなく客も一緒に作るものと言う人も多いが、サンボマスターは特にそれが顕著なのだ。

 

それに応えるように客もステージの歌や演奏に負けないぐらいに歌うし叫ぶし盛り上がる。この客の盛り上がりや客の熱さも含めて『サンボマスターのライブ』なのだ。

 

アンコールのMCでは「ここに集まった8000人は全員4人目のサンボマスターのメンバーですから」と話していた。サンボマスターとファンの関係性はアーティストと客という距離感ではなく、同じメンバーであるという距離感なのだ。

 

そう考えるとスクリーンがなかった理由も理解できる。

 

アーティストが8003人もいたらカメラで全員を映すことは不可能だ。会場に集まった人達は全員がサンボマスターなのだから、メンバーのためにスクリーンを用意する必要はなかったのだ。

 

他のアーティストとは違う照明

 

サンボマスターのメンバーが8003人集まったライブだからこそ、 他のアーティストのアリーナ規模やホール規模でのライブとは照明も違う演出だった。

 

客電が頻繁に付くのだ。

 

曲によっては最初かは最後まで客電がついている曲もあった。アリーナ規模なら照明も凝った照らし方をして魅せるステージも作れるはずだし、レーザーなど派手な演出もできる。しかし、照明はシンプル。ライブハウスと変わらない照明。そしてライブハウス以上に頻繁に付く客電。

 

これも、客もサンボマスターのメンバーという部分を考えると納得できる。

 

ライブの照明はアーティストを照らすものだ。アーティストの演奏やパフォーマンスをより魅力的に観せるためのサポートをするものだ。

 

この日のライブは客席にいた人達も全員サンボマスターのメンバーだ。

 

メンバーが歌ってる時や叫んでいる時は照明でよりパフォーマンスを魅せるために照らすのだ。今日のライブは会場に居た全員が素晴らしいパフォーマンスだった。だからこそ、それを更に引き立てるため、全員を照らすために客電が頻繁に付いたのだろう。

 

最高のステージセットと演出だった

 

他のアーティストの武道館公演と比べると、ステージセットや演出に経費はかけていないと思う。他のアーティストのアリーナ規模のライブに行きなれている人にとっては貧相にも感じたかもしれない。

 

しかし、それはサンボマスターのライブを最高のものにするために“あえて”そうしたのだと感じる。会場に集まった8003人のサンボマスターのメンバーが最高のライブをやるために考えられた演出とステージセットだったのだ。

 

そして、結果的にサンボマスターの日本武道館公演は大成功で、素晴らしいライブになった。来場者は全員楽しめたと思う。

 

冒頭に書いた通り、ライブ終了後に駅へと向かう人達はみんな笑っていた。

 

それはライブが楽しかったという満足感での笑顔と言うよりも、一緒にライブをやり切ったという満足感からの笑顔だ。

 

 武道館アーティスト

 

自分も12月3日にサンボマスターに加入したメンバーの1人になったわけなので、今後も毎回ではないにしろメンバーとしてライブに立たなければならない。それは自分だけでなく、会場に来た人全員がそうだからね。

 

そして、予想していない事態が起こった。

 

自分は武道館のステージに立ってしまったということだ。

 

サンボマスターのメンバーにステージ上から強制的にメンバーに加入させられたから。あの日の武道館は会場全てが一つのステージで全員がメンバーとしてライブパフォーマンスをしていた。つまり、自分も武道館アーティストと言うことだ。

 

というわけで、サンボマスターの日本武道館ライブへ行った人達は全員自分の事を武道館に立ったアーティストだと思いましょう。

 

是非とも家族や友人知人に「俺は武道館のステージに立ったことあるから」「わたしは武道館でライブやったから」と自慢しましょう。ミラクル起こして伝説を作ったと自慢しましょう。

 

きっと「何言ってるんだこいつ?」という反応が返ってくると思うけど、それはクソみたいな毎日だと思ってサンボマスターのライブに行って忘れましょう。

 

ちなみに、自分は恥ずかしくて言えないです。

 

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