オトニッチ-音楽の情報.com-

ニッチな音楽情報と捻くれて共感されない音楽コラムと音楽エッセイ

きのこ帝国をメジャーデビューで見切った人は今のきのこ帝国をすぐに聴くべき

Hatena Feedly

きのこ帝国を聴かなくなった人も多い

 

きのこ帝国は2017年で結成10年目になるバンド。少し変なバンドでもあるきのこ帝国。同世代で活躍しているバンドはたくさんいるが、同世代のバンドとは明らかに違う音楽性で目指している方向性も違うバンドだと思う。

 

元々きのこ帝国はシューゲイザーやポストロック言われるジャンルのロックを演奏していた。それらのジャンルのロックは現代で流行っている音楽ではない。どちらもブームは20年以上前。熱狂的なファンがいるジャンルではあるが、マニアックなジャンルではあった。それにも関わらずきのこ帝国の音楽性のからはむしろ新しさを感じ、その音楽性は唯一無二の個性にもなっていた。

 

最近のきのこ帝国は少しずつ音楽性は変化し、きのこ帝国の評価も変化してきたようにも思う。個性も変わってきたのかもしれない。

 

特にメジャーデビュー以降の変化は顕著だ。インディーズ時代からのファンはメジャーデビュー後のきのこ帝国の変化に失望したファンも少なくないようだった。SNSやYOUTUBEの公式動画のコメントにもマイナスの意見が目立つようになってきた。

 

ファンの入れ替わりは確実に発生し、ファン層はごっそりと入れ替わったと思う。音楽性も変わったしインディーズからメジャーと活動するフィールドも変わったのだから当然かもしれない。

 

しかし、離れてしまったかつてのファンに言いたい。きのこ帝国が好きだったならすぐにきのこ帝国をまた聴くべきだと。きのこ帝国のライブに行くべきだと。今のきのこ帝国も絶対に聴くべきだぞと。

 

今のきのこ帝国、凄いことになってるんですよ。

 

唯一無二のバンドサウンド

 

きのこ帝国の知名度を上げるきっかけになった曲は「海と花束」だと思う。発表されたのは2013年。きのこ帝国の代表曲の1つとなった曲だが、同年代のバンドと比べると明らかに雰囲気の違う曲だ。シューゲイザーを取り入れ、さらにボーカルの佐藤千亜妃の声質の魅力が伝わるようにきのこ帝国の音として昇華されている。

 


 

ちなみにシューゲイザーというジャンルを簡単に説明すると、ギターがうるさいけど歌はメロディアスでミドルテンポの曲が多いけどキャッチーさもあるよって音楽です。ちゃんと説明するとややこしくなるので大雑把にこれだけ知ってればOKです。

 

2010年以降にデビューしたバンドで、このような音楽性で勝負するバンドは少なかった。2013年の時点で音楽フェスはブームになり一般的になっていいて、フェスで盛り上がるような音楽が評価されたり人気が出やすい状況だ。きのこ帝国はそれとは真逆な音楽性だった。ライブでは客が腕すら上げない。もちろんモッシュやサークルなどできない。流行りと逆行したような音楽性。

 

しかし、そいれがきのこ帝国の唯一無二の個性になっていた。流行りの音楽性ではないかもしれないが、それでも楽曲の完成度の高さや個性で注目され評価されていた。

 

少しづつ変化する音楽性

 

2014年に発売された「フェイクワールドワンダーランド」というアルバムは多くのファンを獲得するきっかけになった作品だ。一番の有名曲にもなった「東京」が収録されていることでも人気のアルバム。このアルバムのツアーでは収容人数1,000人を超える赤坂ブリッツでもワンマンライブを行うほどにファンは増えた。

 

 

 きのこ帝国の音楽性はリリースする都度に少しずつ変化している。「フェイクワールドワンダーランド」はかつてのシューゲイザー路線とは違い、ポストロックとロキノン系のギターロックを掛け合わせたような作品。

 

ポストロックとは何ぞやという話だが、簡単に説明するとコード進行や演奏などがロックの王道とは違ったり変わった方法を行っているロックのことだ。ていうか、ポストロックの定義は専門家でも人によってバラバラだから普通のロックと違うっぽいと思ったらポストロックと思っていたらいい。

 

 音楽性が変化してもきのこ帝国の個性は唯一無二だった。音楽性の幅が広がったとも言える。繊細な表現が演奏でできるようになっていた。作詞も今までのような過激な歌詞や尖った表現だけでなく、視点が独特さや素朴ながらも印象的な表現の歌詞も増えた。今までとは違う魅力も生まれたのだ。

 

注目度も上がって人気も今まで以上に速いペースで上昇したきのこ帝国。しかし、この頃から少しずつ昔からのファンは離れつつあったように感じる。シューゲイザー・ポストロック路線に惹きつけられたファンはきのこ帝国の変化についていけなかったのかもしれない。

 

 

メジャーデビューで昔からのファンが離れていった

 

2015年にメジャーデビューし、11月にはメジャー1stアルバム「猫とアレルギー」をリリースした。この作品はファンの間で賛否両論だった。昔からのふぁんには否定的な人が多かったと思う。新しいファンも獲得できたが、昔からのファンが多く離れてしまうきっかけにもなった作品だと感じる。

 

 

アルバムのタイトル曲でもありリード曲でもある「猫とアレルギー」。この楽曲では今までの作品では使用されることが殆どなかったストリングスやピアノの音が使われている。メンバーの楽器の音以上にそれらの音が目立つ。いわゆるJ-POP的な編曲だ。

 

きのこ帝国はメジャーデビューしさらに変化したのだ。かつてのシューゲイザーやポストロックを感じさせる音は皆無だ。歌詞も内向きだった時代とは打って変わって外へ向いた共感を求めるような歌詞。

 

 他のアルバム収録曲もかなりJ-POPよりの音に編曲されている。そのような楽曲を作れたことはきのこ帝国の音楽性の幅広さによるものだともいえるが、活動初期の音を求めているファンが気に入るような音ではなかったのだろう。SNSやYOUTUBEのコメント欄は批判も目立つようになった。

 

ファン層がごっそり入れ替わったきのこ帝国は翌年、きのこ帝国はメジャー2ndアルバム「愛のゆくえ」をリリースする。そして、きのこ帝国はまた違う変化をしたのだ。

 

原点回帰?

 

 メジャー2ndアルバムの「愛のゆくえ」では原点回帰ともいえるシューゲイザーやポストロックを感じる音作りがされている。しかし、インディーズ時代とも違う魅力のある作品でもある。

 



表題曲の「愛のゆくえ」ではインディーズ時代のように歪んだギターが鳴っている。その音は初期の雰囲気も感じつつも新しさを感じる音だ。音が丸くなったように思う。荒々しいようで音作りが繊細なのだ。きのこ帝国の演奏力が上がっていることがわかるような演奏。

 

他の楽曲もインディーズ時代を彷彿させるような雰囲気もありつつ、新しさを取り入れているようにも思う。フィッシュマンズを感じさせるようなビートもあったり、ストリングスの使い方もJ-POP的な使い方ではなくバンドサウンドを引き立てる役割として使用していたりと。

 

 このような方向性はかつてのシューゲイザーやポストロックの路線も経験し、メジャーデビュー後のJ-POP路線があったからこそ生まれた方向性ではと思う。それらの特徴やきのこ帝国と相性の良い部分を組み合わせて新しい方向性を作っているようにも思う。

 

完全な原点回帰ではないものの、昔からのファンも好きになれる要素が詰まっているアルバムだとは思う。アルバムだけでなく、ライブも良くなっている。きのこ帝国のライブに関しては変化ではなく進化だと思う。今のきのこ帝国のライブはきのこ帝国以外にはできないような凄いライブになっている。

 

離れてしまった昔のファンこそライブを観るべきではと思うほどに。

 

 

今は凄いことになっている

 

 先日きのこ帝国の結成10周年ツアーの東京公演を観てきた。これが素晴らしいライブだった。10年間の集大成ともいえるセットリストと、10年間の歴史を積み重ねたからこそできた演奏とパフォーマンスが素晴らしかった。

 

f:id:houroukamome121:20180415043906j:image

 

 10周年ツアーなので10年間で発表された楽曲が年代に偏ることなく満遍なく演奏された。10年間の中で様々な音楽性に挑戦し変化や進化をしたきのこ帝国。しかし、ライブで演奏する楽曲はどれも「きのこ帝国の個性がつまった音」になっていた。

 

インディーズ時代の人気曲の「海と花束」もJ-POPを感じる楽曲の「猫とアレルギー」も演奏された。音源では全く方向性が違う楽曲。しかし、ライブではそのようには感じなかったのだ。

 

きのこ帝国の演奏はメジャーデビュー後、かなり上手くなっている。演奏の細かなニュアンスもライブで表現できたりとCDとはまた違う演奏をしていた。J-POP的な優しい演奏というよりロックバンドの鼓膜を震わせるような演奏。初期の演奏をアップデートさせ進化させたような感じ。今までの経験で得たものを全て演奏に生かしている。

 

そのため「猫とアレルギー」もロックバンドの演奏としてライブでは音源とは違う演奏になっている。特にアウトロのセッションは圧倒させられる名演だった。その演奏は心地よいグルーブ感もあり、それでいて激しいのに音の響きの美しさも感じる演奏。

 

きのこ帝国の根本は変わっていないし、初期の路線を辞めたわけでもない。様々な挑戦をすることできのこ帝国は進化したのだ。変化ではなく音楽性の幅を広げた進化だったのだ。

 

今のきのこ帝国を聴いてほしい

 

きのこ帝国は変化を続けて来たバンドだ。受け入れられない時期があるのは仕方がないことだと思うし、当然のことかもしれない。しかし、方向性は違っても常に良い作品を良い演奏で届けるという姿勢は変わっていないように思う。

 

今のきのこ帝国は様々な方向性に挑戦し、それが一周した頃にも思う。様々な音楽性を取り入れたきのこ帝国の演奏は最強だ。今のきのこ帝国のライブを是非体感して欲しい。特に昔きのこ帝国が好きで、音楽性の変化によって離れてしまったかつてのファンに。今のきのこ帝国、めっちゃカッコいいんだよ。

 

きのこ帝国のライブは棒立ちでじっくり演奏を楽しんでいるファンが多い。その様子はフェスで盛り上げるタイプのバンドが売れる現代では異様かもしれない。しかし、それは演奏に圧倒されているとも言えるし、他にない個性とも言える。それに、そんな異質なバンドが2,000人以上の規模の会場をソールドアウトさせているのだ。

 

きのこ帝国はなぜ若手バンドの中でも異質な音楽性で生き残り、一定の地位や評価を得ることができたのか。その答えはは今のきのこ帝国が奏でる音やライブでのパフォーマンスに全てが詰まっているのではと思う。

 

だからみなさん、きのこ帝国を聴きましょう。