オトニッチ

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チャットモンチーがガールズバンドに革命を起こした部分について

チャットモンチーが完結してしまう

 

チャットモンチーは日本のロックシーンに多大な影響を残した。メジャーシーンで活躍するガールズバンドのあり方として革命を起こした。これについて異論は認めたくない。人気もあったし評価もされていたとは思う。でも、個人的にはまだ足りない。

 

告白

 

チャットモンチーの前からロックを演奏し歌うガールズバンドは沢山いた。しかし、チャットモンチーほど自然体でロックを演奏し、アマチュアから成り上がってメジャーシーンで結果を出したガールズバンドはなかったと思う。

 

今頭の中にGO!GO!7188が浮かんだ人もいるかと思う。しかし、GO!GO!7188はガールズバンドではない。湘南乃風に混ざっても違和感なさそうな男性ドラマーがいる。

 

 

自然体だったのは見た目だけではない。演奏も歌詞も自然体だった。活動に関しても自然体だった。チャットモンチーは新しいガールズバンドの形を作ったと言っても過言ではないと思っている。

 

自然体な歌詞

 

チャットモンチーは歌詞が自然体で等身大なのだ。それはロックバンドの男性ソングライターには書けないような歌詞であったり、ロックバンドが避けていたようなテーマの歌詞だったり。それは過去のロックを歌うガールズバンドでも珍しいタイプの歌詞だと思う。

 

今の顔もっとよく見せて
写真に撮るの間に合わないかな
さっきから鳴り止まない気持ち
がんばってね 私のツマサキ

 

上記は「ツマサキ」という曲の歌詞だ。この曲は男女がデートをしている歌詞で、主人公の女の子が想いを寄せる人の顔を近くで見たいと思ったりのど仏を触りたいと思い、つま先立ちして背伸びをする可愛らしい歌だ。

 

「ヒール高い靴」や「ペディキュアの蝶々」など女性的なワードも歌詞に使われている。ガールズバンドだとしても女性的な可愛らしさをあざといぐらいに表現したバンドは少なかったのではと思う。

 

そして、こんな可愛らしい歌詞でもロックを感じてしまうのだ。チャットモンチーがカッコつけたりキャラクターを演じるわけではなく、自然体でありのままに歌詞を書いている部分が大きく影響しているのではと思う。

 

「ハナノユメ」という曲には「赤い血」「刃」などトゲのある言葉が使われている。その言葉に可愛らしさはない。「風吹けば恋」という曲では「はっきり言って努力は嫌いさ」とJ-POPでは言わなそうなフレーズをストレートに歌っている。

 

チャットモンチーの歌詞はかっこつけてもいないし良いことを言おうともしていない。「自然体」なのだ。その時々で想ったことや伝えたいことをそのまま歌詞にしているのではと思う。メンバー全員が作詞をしていたバンドだが、全員の歌詞で同じスタンスを感じる。ロックバンドだからとかっこつけたりせず、ありのままの伝えたい言葉で表現をしている。だからかわいらしい表現もトゲのある表現も混在しているのだろう。ありのままでかざらない姿に人間味があり、そこに「ロック」を感じるのかもしれない。

  

演奏の魅力

 

チャットモンチーはメジャーデビューしオリコンのトップ10にもランクインするほどの人気はあった。それでもチャットモンチーは基本的にメンバーだけで鳴らすバンドサウンドにこだわっていたように感じる。メジャーデビューしたバンドはさらなる飛躍を目指してメンバー以外の楽器の音を入れることも多い。しかし、チャットモンチーは自分たちの音だけで勝負したかったのかもしれない。

 

スリーピースバンドなので、メンバーの多いバンドと比べると演奏に厚みは出しづらい。テクニックがあれば魅せる演奏もできたりインパクトを与えることもできるが、チャットモンチーは技巧派バンドでもないし、演奏で飛びぬけたテクニックがあるわけでもない。それでもチャットモンチーの演奏は魅力的なのだ。それは演奏に工夫があったからだと思う。

 

↓画像をクリックで動画になります



「風吹けば恋」を聴いてもらうとわかりやすいかもしれない。どの楽器も難しいフレーズを弾いているわけではない。3人なので演奏に厚みがあるわけではない。しかし、スリーピースなのでそれぞれの楽器の音が聴き取りやすいという強みを最大に生かしている。ギターもベースもドラムも簡単ながら印象に残るフレーズを弾いている。

 

ギターの出だしのフレーズは初心者でもすぐに弾けそうなのに印象的。あとオクターブ奏法が丁寧で上手いのだ。オクターブ奏法は基本的な演奏方法の1つだが、基本がしっかりしているのだろう。ベースラインはメロディを弾くように動いていて印象的だがそれほどテクニックが必要なわけではない。ドラムはBメロで不思議なリズムパターンを叩き、サビで王道の叩き方で盛り上げる。

 

YOUTUBEのMVの2分30秒からの2番のサビ後の間奏での演奏は「これぞチャットモンチー」といえるような個性的なセッションになっている。

 

ロックバンドとして正統派な演奏の中に、隠し味のようにチャットモンチーにしかできない演奏の表現がある。それはチャットモンチーのこだわりでもあり唯一無二の個性だと思う。

 

ドラムの高橋久美子が脱退してからは賛否両論がありながらも2人でステージに立ち演奏をしていた。そのもがきながらも表現する姿は賛否両論がありながらもかっこよかった。サポートメンバーを加えた編成で演奏する時期もあったが、それも2人で試行錯誤してもがいた先の答えの1つだったのだろう。

 

チャットモンチーの軸はずっとぶれていない。それは活動を完結するときもぶれずに変わらないのだと思う。

 

自然体なルックス

 

チャットモンチーはルックスも自然体だった。ライブでもTシャツにジーパンだったりする。特別お洒落をしてステージに上がるわけでも、ステージ衣装を用意するわけでも、ばっちりメイクをしてMVに出演していたわけでもない。

 

チャットモンチー以前のメジャーで活動するガールズバンドはTシャツでステージに上がるバンドはほとんどいなかったと思う。衣装があったりお洒落な服装だったり女性を感じさせるセクシーな服装だったり。ZONEは普段着のような衣装だったけどZONEはもともと楽器はもっているだけの音楽ユニットだったからね。途中から楽器を弾き始めたけど、少しジャンルが違う。

 

チャットモンチーはありのままの姿でありのままの演奏で表現していた。ありのままと言っているがMay J.の話ではない。

 

ガールズバンドだとどうしてもルックスにも注目されることが多い。しかしチャットモンチーは近所に買い物に行くときと同じような服装で、自然体でステージに立って演奏した。それはルックスを注目されるガールズバンドにたいしてのアンチテーゼや、そのようにガールズバンドを観る人への反骨精神だったのかもしれない。そして、何より自分たちの演奏や楽曲を聴いてほしいという想いが強かったのかもしれない。

 

そんな自然体でステージにたち、かざらない表現の楽曲を自然体で演奏していた。まっすぐ表現するチャットモンチーはかっこよかった。そのスタンスからロックを感じる人も多かったのではないだろうか。

 

そして、チャットモンチーの登場により気張らずに自然体でロックを表現してもいいのだと思いバンドを組んだ女性も少なくはないのではと思う。

 

結局のところ、曲がめっちゃ良い

 

チャットモンチーのトリビュートアルバムが発売された。『CHATMONCHY Tribute 〜My CHATMONCHY〜』という作品。チャットモンチーの後輩バンドから同期のバンド、先輩バンドも多数参加している作品。

 

このトリビュートアルバムがとても良いのだ。どのバンドもチャットモンチーへのリスペクトがある上でカバーしていることが伝わってくる。それでいて、それぞれのバンドの個性や魅力も感じる。

 

しかし、それらのカバーされた曲からはどの曲からもチャットモンチーの個性を感じる。他者がカバーしたチャットモンチーの曲を聴いてもチャットモンチーを強く感じてしまうのだ。

 

チャットモンチーが演奏していなくても、メロディや歌詞にも唯一無二のチャットモンチーの個性があったのだ。トリビュートを聴くことで、改めてチャットモンチーの楽曲の魅力や個性を感じることになった。

 

チャットモンチーは自然体でステージに立ち、ありのままの表現で楽曲を作っていたことがガールズバンドに大きく影響を与えた理由の1つだと思う。しかし、前提として、チャットモンチーの作る楽曲がめちゃくちゃ良いのだ。名曲だらけなのだ。

 

チャットモンチーは後進のガールズバンドや女性ボーカルのバンドに大きな影響を与えたと思う。その最も大きな理由はチャットモンチーはガールズバンドでも男性に負けないほどロックな演奏ができる上に、名曲を作ることができるということを知らしめたことだろうなと思う。

 

長々と書いたけど、言いたいことは1つだけです。「チャットモンチーはめっちゃカッコイイ」ということだけです。