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たこ焼きのラブソングを聴いて大塚愛を天才だと思った~たこやきレインボー『卒業ラブソディ』~ 【感想・レビュー】

最近よく勧められるので

 

「たこやきレインボー聴いてくださいよ!」

「たこ虹はもっと評価されても良いと思うんですよ!」

「たこ虹のCD買ってよ!」

 

などなど、何故か最近たこやきレインボーを勧められることが多い。むしろ脅迫に近い。アイドルオタクという生き物は自分の好きなグループやアイドルを人に聴けと押し付ける勧めたがる生き物でもある。特にアルバムやシングルのリリースの前後には。

 

最近押し付けられる勧められることが増えたと思ったら、ちょうど新しいアルバムをリリースしたんですね。『ダブルレインボー』という作品。

 

 しつこく押し付けられる強く勧められるので公式がYouTubeにアップロードしているアルバムのリードトラックを聴いてみた。『卒業ラブテイスティ』という曲。聴いてみてぶったまげた。なんだこれはと。めっちゃええやないかと。

 

卒業ラブテイスティ

卒業ラブテイスティ

  • たこやきレインボー
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

Perfumeっぽい?

 

この曲、少しだけPerfumeっぽい雰囲気を感じる。最近のPerfumeではなく、10年ぐらい前に流行り始めた頃のPerfume。

 

たこやきレインボーは、Perfumeをチープにしたような感じ。チープと言うとディスっているようにも見えるけども、そんな事はない。むしろ賛美だ。

 

個人的な考えだが、Perfumeは洋楽的な作り込まれた音に、JPOP的なキャッチーなメロディと歌詞をエフェクトが強くかかった声で歌われることで、今までにないアイドルとしてインパクトがあり大ヒットしたのだと思う。

 

あと、Aメロ→Bメロ→サビの流れを2回繰り返して大サビ→サビみたいな一般的なJPOPの流れとは違う構成になってる曲も多い。これも新鮮さがあり興味を持たれたのだと思う。そういった新しさもperfumeにはあった。

 

たこやきレインボーの『卒業ラブテイスティ』 はそれと比べると、曲の構成はJPOPの定番的な構成だし、音作りも編曲もそこまで凝っているわけでもなさそう。全体的にもっと完成度を上げられそうな隙があるのだ。

 

でも、その〝隙〟がある感じが最高なんです。その〝隙〟が『卒業ラブテイスティ』の魅力を引き出しているのだと思う。

 

”隙”が心を動かす

 

細かい部分まで作りこまれていたり、技術面で上手ければ名曲になるわけではない。音楽で人の心を動かすことは、技術だけではないのだ。少し下手だったり、素人くさい部分があることで魅力が増すこともある。

 

例えば銀杏BOYZは歌も演奏も上手くはないが、それによって奏でる音に生々しさを感じる。SMAPも中居正広の歌声があるから魅力が増している。保育園児が歌っている歌声にほっこりしてしまうのも下手だけど一生懸命だからだ。

 

特にアイドルソングの場合は、もう少し完成度を上げられそうに思うような未完成にも感じるような「隙」が楽曲やアイドル自身の魅力を引き出すためにも重要ではと思う。しかし、歌が下手すぎても駄目だし楽曲がチープすぎてもいけない。計算された隙」が重要なのだ。

 

計算された隙とは

 

個人的に近年の楽曲で「計算された隙」を感じる作品はNGT48の「青春時計」だ。

 

 

この曲は音数が少ない。そして演奏も単純なフレーズが多くシンプル。音もそれほど良くはない。もっと編曲を凝ることもできたと思う。そして、出だしから下手くそなラップが乗っかる。もっと上手くラップさせることもできたかもしれない。しかし、これが不思議な魅力になっている。なぜか印象に残り中毒性がある魅力的な楽曲になっている。それが他では聴いたことがない新鮮な音に感じ、個性や魅力になっている。

 

この曲はクオリティをもっと上げられそうな隙がたくさんあるようで、実はかなり考えられて作られたのではと思う。編曲も音作りもメンバーへの歌唱指示も。一歩間違えば低品質になるところを上手く調整して中毒性のある楽曲に仕上げている。

 

たこやきレインボーの『卒業ラブテイスティ』も同じように「計算された隙」と中毒性を感じる。

 

『青春ラブテイスティ』の中毒性について

 



曲の構成はAメロにBメロにサビと続く王道J-POPの構成。ミドルテンポのダンスミュージックでシンセサイザーの音が印象的。リズムパターンもバックトラックの音も最初から最後まで大きな変化や意外な展開はない。クオリティを上げようと思えばまだ手を付けられる部分があるかもしれない。しかし王道な構成と編曲のため安心して聴くことはできる。

 

ボーカルは最初から最後まで甘い声でささやくように歌っている。アイドルで全編このような歌い方をすることは珍しいかもしれない。歌は下手ではない。それなりに上手い。しかし、少しだけ不安定。このボーカルがバックの演奏に乗っかると不思議な魅力が生まれるのだ。

 

新しさはないが王道な展開と編曲で、安心して聴くことができるバックトラック。それに少しだけ不安定なボーカルが重なる。この「安定と不安定」の一見ミスマッチとも思える組み合わせが不思議な魅力を生む。一度聴いたら耳から離れないようなインパクト。もしも編曲をもっと作りこんでいたり、ボーカルがもっと上手かったらこの魅力は生まれなかったのではと思う。

 

もしかしたらボーカルを入れたらどのような聴こえ方がするのかを考えたうえで、あえて隙のある編曲にしたのかもしれない。

 

歌詞のインパクト

 

たこやきのラブソング

くるくる回して

あたしを転がして

愛してくれてありがとう

 

これは『卒業ラブテイスティ』のサビの歌詞である。意味不明だ。なんだたこやきのラブソングって。しかし、意味不明だがインパクトはある。一回聴いたら忘れられない。しかも、たこ焼きを焼いているときに回す動きと、男女の恋愛模様をダブルミーニングにしている。たこ焼きと恋愛をかける曲は世界初だろう。

 

ここがとろけて

あなたをやけどさせる

忘れさせないように

 

このようにたこ焼きと関連するようなフレーズで切なさも表現している。歌詞を全て読むとわかるが、この曲は切ないラブソングだ。たこ焼きから切なさを感じるとは思わなかった。ユーモアと切なさがたこ焼きの具材のように混ぜられている歌詞だ。

 

中毒性がある『卒業ラブテイスティ』。作詞作曲は大塚愛だ。

 

大塚愛は進化していた

 

大塚愛の楽曲といえば「さくらんぼ」が有名だと思う。売り上げのピークは10年以上前のアーティスト。

 

さくらんぼ

さくらんぼ

  • 大塚 愛
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

アップテンポでキャッチーなポップスを作り、たまにバラードを歌っていたというイメージ。当時から耳に残るメロディや歌詞を作ることが得意なアーティストだった。良い意味で軽いノリの曲が多かった。作詞作曲だけでなく編曲もできるアーティストだ。

 

『卒業ラブテイスティ』を大塚愛が作ったと知り、少し驚いた。編曲も担当している。言われてみるとメロディラインも大塚愛を感じさせるようなメロディでもある。しかし、過去の代表曲とは作り方が違うように感じるのだ。過去の代表曲は生楽器がメインの編曲だ。曲としても生楽器が映えるような曲だと思う。

 

しかし、『卒業ラブテイスティ』はシンセサイザーの音が印象的。生楽器よりも電子音が似合うような曲だ。J-POPよりの「さくらんぼ」と違い、ダンスミュージックより曲だ。音楽性の幅が広がっている。

 

歌詞や編曲も自身が歌う曲とは違い、きちんと提供先のことを考えて作られている。たこやきレインボーに提供するからか「たこ焼き」をテーマにし、それを活かしてインパクトを残す歌詞にしている。編曲もAメロはボーカリストが複数いるグループでなければできないような歌割になっている。

 

大塚愛はシンガーソングライターとしてだけでなく、楽曲を提供する音楽作家としてもクオリティの高い作品を残しているようだ。今年で活動15周年のアーティスト。キャリアもそれなりにあるので当然かもしれないが、着実に実力も才能も伸ばしている。

 

根本は変わらない大塚愛

 

大塚愛は進化も変化もしていると思う。しかし、デビュー当初から根本の部分は変わっていないのではと思う。それは、一度聴いたら忘れられないキャッチーな曲や歌詞を作ることだ。

 

大塚愛の「さくらんぼ」もたこやきレインボーの「卒業ラブテイスティ」は曲の方向性は違う。リスナーに与える印象も違う曲だと思う。どちらも一度聴いたら忘れられないインパクトがある。そして、何度も聴きたくなってしまう。

 

つまり、曲作りの引き出しは増えているが、大塚愛の「強み」は変わっていないのだ。むしろその強みも伸ばしつつ、新しい音楽を取り入れているようにも思う。そして、まだ隠している音楽の引き出しがあるのかもしれない。その引き出しは自身の曲を作るときよりも、楽曲提供時の方が意外な才能が見えるかもしれない。

 

もっと楽曲提供を大塚愛にはしてほしい。まだまだ凄い曲を作れるのではと思うわけです。

 

というわけで、大塚愛さんお願いします。たこやきレインボーに楽曲提供をもう1回!