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【ネタバレだらけ】私立恵比寿中学「劇場版 EVERTYTHING POINT -Other Edition-」映画の感想

もう観ることができない作品

 

2月11日から2月17日まで新宿ピカデリーにて1週間限定で上映された「劇場版 EVERTYTHING POINT -Other Edition-」

 

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この映画は私立恵比寿中学のライブツアーに密着したドキュメンタリー。毎年Blu-rayでリリースされていて、去年の12月にもリリースされた。それが特別版として1週間限定で映画になって上映されたわけです。

 

時間軸としては2017年の春ツアーを追っていた去年Blu-rayでリリースされた「EVERTYTHING POINT 5」とかぶる部分がある。しかし、編集や収録されている映像は全く違うものになっていて、Blu-rayと映画とでは視聴者の受け取り方も全く違う印象になっている。

 

 

これがファンにとってエビ中の様々な顔や成長を感じることができる観るべきとも言える作品でもあり、ファン以外にとってはエビ中というグループがどのようなグループなのかわかりやすく説明されていて好きになってもらえるような作品であったと思う。アイドルグループの日常を撮っているだけなのに、そこにはドラマもある。エモい。

 

つまり、ドキュメンタリーとして普通に良い作品なんですよ。

 

しかし、もう観ることができない。今後の上映予定もソフト化の予定もないからだ。もったいない。そのため自分の備忘録としても、観に行けなかったファンのためにも、自分の覚えている内容の詳細と感想について書いておこうかと思う。

 

当然ですが、もう観ることが(たぶん)できない作品なので、ネタバレだらけです。今後何かのタイミングで上映されることもあるかもしれないですが、自己責任でお願いします。

 

廣田あいかの生誕祭から始まる物語

 

 この作品は2017年1月の廣田あいかの生誕ライブの映像から始まる。ちなみに廣田あいかはこの生誕ライブの約1年後、2017年1月3日の武道館公演で脱退をした。

 

関連記事:廣田あいかはエビ中を辞めてもアイドルは辞めない 〜武道館ライブ「私立恵比寿中学迎春大学芸会 ~forever aiai~」感想とライブレポ〜 - オトニッチ-

 

Blu-rayの「EVERTYTHING POINT 5」では春のライブツアーに密着し、その期間についての2時間半収録された春ツアー時のエビ中についての濃厚な内容だった。「劇場版 EVERTYTHING POINT -Other Edition-」は春ツアーの様子はコンパクトに収録された代わりに、その後の夏のライブや廣田あいか脱退発表時の様子や7人での最後のライブと6人での最初のライブの様子も収録されている。

 

そのためか廣田あいかにピックアップされたシーンも多い。印象的なシーンも廣田あいかがメインのシーンが多い。例えば、春ツアーの開始前から脱退することを決めていたとカメラに話すシーンや、メンバーに脱退することを伝えるシーンなど。

 

一部のスタッフにだけ脱退を伝えていた廣田あいか

 

映画の前半には廣田あいかの独白がある。春ツアーの舞台裏でカメラの前で語っていた。「今回のEVERTYTHING POINT はあまり話しすぎないようにしたい」と前置きした後に、約10分間話し続けるぁぃぁぃ。

 

「ツアーの目標はアイドルっぽく頑張ること。一部のスタッフさんにしか脱退することは話していないですけど、これが自分にとっては最後の春ツアーになるので。やることがいっぱいでメンバーは混乱しちゃうと思うからまだ言っていないけど。いろいろと自分でずっと考えていて、生誕祭の後ぐらいから考えていて、自分にとっての目安の年齢もあったし、自分のやりたいこともはっきりしていたので。エビ中はこれからも変化はあると思うし、もしかしたら新メンバーが入ることもあるかもしれないけど、今来てくれている人たちには自分がいたということを忘れられないように残したい」

 

このような内容を約10分間(途中カットされていたから実際はもっと長い)語っていた。つまり、春ツアーの時点ではぁぃぁぃは辞めることを決めていて、それを知っているスタッフもいたのだ。それを意識しながらツアーの密着映像を観ると、ライブシーンも舞台裏のシーンも、レッスン風景も、見ていて少しだけ切なくなってくる。

 

中山タイムと小林歌穂の落書き

 

 2017年の春ツアーからエビ中にとって大切な取り組みの1つになったのではと思う『中山タイム』。これはMBSラジオで放送されている『エビ中なんやねん』のコーナーをきっかけにやることが決まった、ライブ前にテンションを上げるための儀式。

 

最初は中山も一緒にやるメンバーも探り探り行っていたテンションを上げる儀式。それがライブを重ねるごとに内容も進化し、メンバーのテンションが実際に上がっていることが面白い。この映画の中心となるエピソードはこれではと思うほどにたくさん収録されている。

 

最初は「あー、いー、うー、えー、おー」と発声練習をした後にジャンプするだけだった。それが「くーちを大きくあーけましてー♪」という歌も加わったり、腕を回したり、その場で足踏みをしたり、ジャンプの回数が増えたりジョイマンのネタが加わっったりと進化していった。

 

その進化と比例するようにメンバーのテンションは上がっていたし、結束もさらに強くなっていたように思う。そして、今までは最年少で引っ張っていくタイプでもなかった中山莉子がエビ中を引っ張っていく存在に成長したのだと感じる。

 

そして、同じく最年少の小林歌穂の成長も感じる。

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上の絵は小林歌穂が書いた絵だ。似てるような似てないような絶妙なエビ中メンバーの似顔絵。ひなただけ首がある。この絵は廣田あいかがメンバーに脱退について話した日に書かれたものだ。

 

廣田あいかがメンバーにレッスンスタジオで脱退することを伝えた日。その日は決して明るい雰囲気ではなかったと思う。映像を観てもそれは感じた。

 

そんな日でも帰り際にホワイトボードにホワイトボードにメンバーに絡みながら小林歌穂はメンバーの似顔絵を書いていた。それは普段の私立恵比寿中学の日常のヒトコマであって、メンバーも周囲のスタッフもほっこりして和む時間だったと思う。

 

昔はお刺身が食べれずに食事へ行く場所を変更して「自分のせいでみんなに迷惑をかけた。サーモンなら食べれたのに」と泣いて他のメンバーに慰められていた子が、逆にみんなを和ませる子になった。

 

今までずっと応援していたファンはかほりこの成長を感じることができ、最近ファンになった人やあまりエビ中を知らなかった人にとっては、この2人がエビ中の良い空気を作っていると感じることだろう。

 

廣田あいかが脱退をメンバーに伝えた日

 

夏の恒例ライブ『ファミえん』の開催2日前。廣田あいかはメンバーにエビ中を脱退することを伝えた。場所はリハーサルを行っているスタジオ。少しかしこまった雰囲気の中、メンバー全員が呼ばれる。真山りかは「なに?こわいこわい」とつぶやく。メンバーは不安そうな顔をしている。そんな空気の中、ぁぃぁぃは「わたし、廣田あいかは私立恵比寿中学を転校します」と話し始める。

 

悟ったような表情をする真山りか。

呆然とした顔をした後、斜め下をにらむ安本彩花。

真剣な表情でまっすぐぁぃぁぃを見つめる星名美怜

目をはらすほどに涙を流す柏木ひなた。

口を大きく開けて驚く小林歌穂。

喋れなくなるほど号泣する中山莉子。

 

「廣田あいかは1月3日でエビ中を転校します。もともと女の子グループは苦手で学校でも避けてきたから、エビ中でも最初は無理だと思ったけど、8年近く所属できました。それはみんなだからだと思うし、いっしょにいて楽しいかったし寂しい。でも、自分の将来やりたいことや夢のことをずっと考えていて、3月ぐらいに辞めることを決めました。いつかは辞めないとと考えていて、タイミングも今が正しいのかはわからないけども、自分の将来を考えて決めました」

 

途中、涙を目にためながら、声も震わせながらぁぃぁぃは話していた。その内容は脱退発表時にファンへ伝えた内容と殆ど同じだった。

 

それぞれのメンバーが様々なことを想っただろう。その中でも印象的だったのは中山莉子が泣き崩れながらも何かを伝えようとしていたこと。「一昨日、練習でぁぃぁぃが鏡に映った時に、なんか、わかっちゃって」と言って上手く話せず泣き崩れる姿。メンバーの反応を見ていると胸が締め付けられるような気持にもなった。しかし、メンバーそれぞれの反応は違えど、エビ中を大切にしているという想いや絆を感じた。それは脱退してしまう廣田あいかにも。だからこそ、この映像を観て、よりエビ中を応援しようとファンは思うのかもしれない。

 

ライブ映像

 

映画ではライブ映像も多く使われている。春ツアーはもちろん、夏の恒例行事である野外ライブのファミえんの映像や廣田あいかのラストライブの武道館公演や6人で最初のライブの映像など。

 

印象的な映像は、廣田あいかがメンバーに脱退を伝えてからのライブだ。

 

脱退を伝えて2日後に開催されたファミえんで『まっすぐ』を歌っている時に涙目になっている廣田あいかの映像。 

 

まっすぐ

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ここ数年、ファンの前では滅多に涙を見せない廣田あいか。それでも涙目になっていたのは最後の『ファミえん』であったからだと思う。映画内でのインタビューでは「ファミえんは1年の中でも特に楽しみなライブ」と語っていた。

 

廣田あいかのラストステージになった日本武道館公演での映像。

 

シンガロン・シンガソンを歌っているときの真山りかは涙をながしながら必死で歌っていた。たまにぁぃぁぃに視線を向けて泣きながら微笑んだりして。「忘れずにいたいな」という歌詞のフレーズはいつも以上に優しく歌っているように感じた。

 

シンガロン・シンガソン

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 そして、6人で最初のライブになった日本武道館公演での映像。

 

『ゼッテーアナーキー』という曲にはメンバーの出席番号が歌詞にある。その歌詞はいなくなったメンバーの番号も入っている。それでも、松野莉奈の番号も廣田あいかの番号も歌詞から削らずに6人で歌っていた。しかし、このライブ映像はメンバーは映っていない。映っていたのは松野莉奈のユニフォームを着て、松野莉奈の出席番号である9番の歌詞でジャンプしているファンの背中だった。

 

ゼッテーアナーキー

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それは今のエビ中は6人でも過去を忘れてはいないし、その歴史があった上での今だということを語らずともパフォーマンスで伝えているようでもあった。

 

エビ中メンバー以外の登場人物

 

この映画にはメンバーやスタッフ以外に出てくる登場人物が3人いる。エビ中の元メンバーで今回ナレーションをしている七木奏音。流れ星のように一瞬だけ出てくる流れ星のちゅうえい。そして、桜えび~ずのメンバーの水春だ。

エビ中の6人での最初のライブの日。水春は楽屋で安本彩花と会話をしていた。1月3日の廣田あいかのラストライブを観てどう感じたかの感想。

 

水春「開演前から泣いちゃって。小6からエビ中ファミリーなんですよ。こうやって妹分になれて、それで昨日のライブを観て、言葉にしたくないような感情になって。楽しいとかでは表せないような感情。すごい勇気をもらった」

 

 安本「なんか恥ずかしい。こんな自分でもがんばってこれたから、いっしょに頑張ろう」

 

そして、エビ中のライブを観ている水春の映像が流れた。『涙は似合わない』を口ずさみながら泣いている水春。

 

涙は似合わない

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その映像はエビ中メンバー以外がエビ中と関り、ライブを観て、どのように感じているかを作品内で唯一映している映像だ。エビ中の妹分グループのメンバーではあるが、ファンの目線に最も近い感情を持って水春はライブを観ていたのかもしれない。

 

新メンバーは入るのか?

 

水春が出てきた6人最初のライブの映像の次の映像はメンバーのインタビュー映像だった。安本彩花、柏木ひなた、星名美怜、中山莉子の4人のインタビュー。このインタビューの質問で共通していたことは、「もしも新メンバーが入ったらどう思うか」という質問だ。

 

安本「自分も後から入ったし、そのあと何人も新メンバーが入ってきて100%良いことしかなかった。だから自分は新メンバーが入ることは賛成。一番ナイーブなことだけども。悪いことだけではないと思う」

 

星名「かほりこが入った時でも葛藤はあったしメンバーで話し合った。でも入ってきたら良いことしかなかった。グループを存続するためならそれも良いのかとも思う。でも、今の6人でしばらくは頑張りたい」

 

柏木「今のエビ中をもっとよくするために入るなら良いかなとは思う」

 

中山「自分も後から入ってきたから気持ちはわかってあげられるから、新メンバーが入るなら一緒にいてあげたい」

 

 水春が出てきたり新メンバーに関するインタビューをしたりと、新メンバーを加入を思わせるような映像だ。しかし、新メンバー加入のフラグを立てているわけでもないとは思う。

 

上映後のティーチインでも話をしていたが、エビ中は常に変化していくグループだから、もしかしたら新メンバー加入があるかもしれないけど、その時はどう思うのかを知りたくて質問したとのことだった。そのため話の流れで真山と小林には聞いていないと。水春を長い尺で出演させた理由はファンの目線での映像を収録させるためらしい。その理由で100%納得はしないけど

 

 映画で伝えたかったことは?

 

7人になってから最初のツアー。廣田あいかが脱退発表後のライブ。廣田あいかの最後のライブ。6人で初めてのライブ。これらのライブに密着した映像で構成されている今作。映像に収められている期間は1年にも満たない。それにも関わらず、エビ中には様々な変化が起こっている。

 

活動形態も変化があったし、最年少であるかほりこの成長も変化だ。パフォーマンスも変化や進化をしている。メンバーの絆もより強まっている様子が映像からもわかる。これも進化であり変化だ。

 

そのような変化があっても、エビ中の根本の部分は変わっていない。映画を観て、エビ中がどのような形になっても好きでいられる自信を持てる。自分はね。もしも新メンバーが加入したとしても。

 

今後も変化や進化を続けて行くエビ中にとって、変化の1つとして新メンバーが加入することもあるかもしれない。新メンバー加入について既存のメンバーにインタビューした理由は、今後も変化を続けていくことをファンに伝えるためでもあり、新メンバーがもしも加入してもエビ中は変わらずに続いていくし、良いグループであり続けるということを伝えようとしているのではと思う。インタビューの答えを聞けば、新メンバーが加入しても悪くなることはないと思える。きっとさらに良くなるのではと思える。

 

 映画のラストシーンではナレーションの七木奏音が「出席番号9番の松野莉奈が大好きな元出席番号1番の奏音でした」と挨拶をしていた。最後のエンドロールには松野莉奈の名前を含む、8人のエビ中の名前が記載されていた。

 

変化があってもエビ中は過去も大事にしているし、過去があったうえで現在があり未来もあるということがスタッフも含めた全員がわかっていて、そこに対する想いがあるのではと感じた。だから、過去がそうであったように、今後もエビ中に変化や進化があっても、根っこの部分は変わらないんだろうなと確信が持てた。それがエビ中の魅力であって、自分が惹かれた部分かもしれない。

 

今作の魅力を一言では伝えられないし、エビ中の魅力もこの映画でも十分伝わるけど、やっぱり一言では説明できないし、まだまだ魅力はあるよなとは思ったりもする。「劇場版 EVERTYTHING POINT -Other Edition-」は、エビ中ってなんか説明しづらいけど見とかなきゃ損なグループなんだってということをより実感できる作品だった。

 

「なんか説明しづらいけど~」の部分、キャッチコピーとしても永遠に使えそうな気がする。

 

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