オトニッチ

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オトニッチ的2017年度邦楽アルバム大賞TOP10

2017年も終わりますね

 

もう今年も終わりですよ。早いですね。ドン引きですよ。早すぎて。今年はなんとなく始めようと思ってブログを書き始めたのですが、自分の想像以上に多くの方に読んでいただけて嬉しかったです。

 

年末になると音楽雑誌で行われる『今年のベストアルバムランキング』。自分もやってみようかなと思いまして。あまり多くなると書いてて疲れるし読みづらくなると思うので、今年発売のオリジナルアルバムから10作品だけピックアップしようかなと思います。音楽に順位をつけるものではないかもしれないですが、個人的な偏見で順位とコメントもつけました。

 

どれも良い作品なのですべて聴いてもらえたらなと思います。今回は邦楽のみで選んでいます。

 

10位 indigo la End『Crying End Roll』

バンドにこだわるのではなく音楽にこだわった作品 

川谷絵音の率いるバンドのアルバムですよ。名盤です。聴くべっきー作品です。キャッチーさは過去作よりもないかもしれないが、1つ1つの音は洗練されていて、編曲の幅も広くなっている。全体的に落ち着いた雰囲気の作品だが、聴いた後にきちんと余韻が残る。

 

今作でインディゴはバンドとして大きく進化したと思う。その進化は演奏力や表現力という部分だけでなく、1つの作品を作るという部分で大きく進化したのではと思う。

 

今作はバンドのメンバー以外の楽器の音が過去作品よりも印象的に使われている。特にピアノの音が印象的な楽曲が多いように思う。remixs曲も収録されており、”バンド感”のない曲もある。しかし、それはアルバムを1つの作品として考えたときにクオリティは高くなっている。それにメンバー以外の楽器の音が鳴っていても、メンバーの演奏は過去作よりも洗練されて印象的な演奏をしている。

 

川谷絵音の作詞作曲やボーカルだけでなく、演奏にも個性がより強くでるようになり、インディゴにしか作れない作品になっているのではと思う。

 

〈おすすめ曲・エーテル〉

想いきり
indigo la End
2017/07/12 ¥250

 

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 9位 台風クラブ『初期の台風クラブ』

懐かしいわけではなく実は先進的?

 以前から京都に台風クラブという面白いバンドがいるという噂は聞いていたんですよ。そんな台風クラブの初の全国流通のアルバムどすえ。

 

70年代の”日本語ロック”という雰囲気を出しているが、よくよく聴いてみると、懐かしい音を鳴らしているわけではないと思う。演奏や曲の構成は70年代日本語ロックや歌謡曲的な部分もあるが、楽器の音作りは現代的な部分もある。メロディも懐かしさというよりも独特さを感じる。昔のロックに影響されている部分はあると思うが、再現したり真似するわけでなく、影響を受けたであろう音楽をうまく消化して自分たちの個性にしているような感じ。

 

アルバムのどの曲を聴いても個性的で、「台風クラブっぽい音」をすでに確立しているように思う。言葉で上手く説明できないので、実際に聴いてみてこの個性を感じてほしい。

 

〈おすすめ曲・春は昔〉



 8位 CHAI 『PINK』

 ルックスよりも音にインパクトがある

 2017年前半からじわじわと注目されアルバム発売で人気が急上昇したバンド。

 

ルックスが話題になりやすいバンドだが、曲をきちんと聴いてみると、曲もインパクトがあるし他にない個性があるんですよ。そして音作りの拘りと引き出しの多さが凄い。歪んだギターもクリーンなギターも綺麗に鳴っているし、シンセの音も個性的。リズム隊も上手い。音作りにはイギリスのバンドのような音も感じる。

 

アングラな雰囲気があるのにメロディはキャッチーだったり、ぶっとんだことやってそうなのに音は繊細だったりと不思議なバンド。繊細で職人気質になったあふりらんぽって感じ。

 

CHAI、来年さらに飛躍しそうな気がするよ。

 

〈おすすめ曲・N.E.O〉

N.E.O.
CHAI
2017/10/25 ¥250

 

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 7位 民謡クルセイダーズ『エコーズ・オブ・ジャパン』

 なんで民謡で踊れるんだ!?

12月に発売されたばかりのアルバムですが、これも面白い作品です。『民謡+ラテン』というコンセプトで民謡なのに踊れる。曲の成分のうち8割は民謡だけども、そこに足される2割によって今までなかったような不思議な音になっている。

 

『民謡+ラテン』と言いつつ、他のジャンルの音楽も取り入れているように感じる。ジャズやロックを感じる部分もあったり、ほんのりブラックミュージックも感じたり。意外と複雑な構成でプログレっぽい展開になったり。リズムもポップスには珍しいリズムも多くて面白い。

 

元々の楽曲がそういった民謡なのか、民謡クルセイダーズがそのように編曲したり再構築しているのかもしれないが、聴いていて楽しいし、昔から日本にある民謡にも関わらず新しさすら感じる。絶対に他にない個性がある作品。

 

〈おすすめ曲・ホーサイ節〉

ホーハイ節
民謡クルセイダーズ
2017/12/13 ¥250

 

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6位 溶けない名前 『制服甘露倶楽部』

 日本人にしかできないシューゲイザー

自らを『歌謡シューゲイザーバンド』と名乗るインディーズバンドの2ndアルバム。

かなり意識して80年代歌謡曲のメロディを作っているような雰囲気や、わざとらしく音をディストーションをかけたギターの音にあざとさも感じるけど、そのあざとさがプラスになっている。もともとシューゲイザーはメロディが甘くて切ないバンドが多いけども、歌謡曲もそういう要素を含んでるんだよね。だから、歌謡曲とシューゲイザーは相性が良かったりする。そして、この歌謡曲的なメロディは日本人だから作れるメロディではと思う。

 

歌謡曲要素は歌のメロディだけでなく演奏にも取り入れられているようにも感じる。シンセの音は歌謡曲を意識した音作りになっているのではと思う。あとどことなく初期のスーパーカーぽさも感じる。

 

そしてアルバムとして統一感があるんだよね。1曲目からラストまで通しで一つの作品に感じる。どれか1曲だけ切り取って聴くよりも通しで聴いてこそ魅力がわかるようなアルバム。

 

〈おすすめ曲・幽界少女異聞〉

幽界少女異聞
溶けない名前
2017/10/04 ¥200

 

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 5位 嵐『untitled』

国民的人気No.1アイドルの実験作品

この作品は記事として詳しく書いたので、詳細はそちらを読んでもらえればと思います。これはすごい作品ですよ。

 

関連記事: 【アルバムレビュー】嵐『untitled』ジャニオタじゃない男が書く感想とおすすめポイント - オトニッチ-

 

様々なジャンルの音楽をぶっ込んでごちゃまぜにした作品で、”普通のアイドルソング”や”普通のポップス”は収録されていない。どの曲も一癖も二癖もある。楽曲提供したミュージシャンが”ポップス”として成立するギリギリのラインは守りつつも、やりたい放題に実験的に音を重ねて作ったような作品。しかし、実験的とはいえポップスとして成り立つように作られている。アルバム全体を通して聴いてもポップスのアルバムとして受け入れることができる作品。

 

特に最後に収録されている「Song for you 」は圧巻。映画のサントラのような構成で曲展開は目まぐるしく変わるのに1曲として成立していて、曲の長さが10分あるにも関わらず中だるみしない。この1曲のためだけでも聴いて欲しい作品。

 

〈おすすめ曲・Song for you 〉

視聴音源もネット配信もないのでアルバムで聴いてください。 

 

4位 ヤなことそっとミュート『BUBBLE』

 ギターの音が気になってしまうアイドルソング

BiSHやPassCodeなどロックを歌うアイドルは珍しくなくなってきたが、それに続くロックを歌うアイドルであり、さらにニッチな音で勝負をしているのがヤナミューことヤなことそっとミュートだと思う。

 

音を聴いてもらえばわかるが、全曲オルタナティブロック。それもアイドルソングだからと手を抜くわけではなく、全曲かなり作りこまれているし、演奏もしっかりしている。歌も良いのだが、演奏に耳を傾けてしまう。特にギターがかっこいい。「ヤナミューの音」がアイドルにも関わらず、すでに1stアルバムから確立している。

 

デビューしたばかりのバンドのような初期衝動もあるのに、ベテランのような安定感もあるクオリティの高い作品。

 

〈おすすめ曲・orange〉

orange
ヤなことそっとミュート
2017/04/19 ¥250

 

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 3位 Cornelius『Mellow Waves』

 BGMにしたくてもできない音楽

11年ぶりに発売された新作だが、前作の『Sensuous』の方向性をさらに掘り下げたかのような作品。それでいてアルバムとして統一感を前作以上に出してきた感じ。

 

全体的に落ち着いた曲が多く、BGMにちょうど良さそうな雰囲気があるんですよ。でも、BGMにできない。それは音の1つ1つが個性的で魅力的だから、BGMにしようとしても曲が気になって仕方がなくなってしまうんですよ。

 

1つ1つの音が繊細で丁寧に音作りや演奏がされているので、流していると聴き入ってしまうんですよね。音の作りこみは今年聴いたアルバムで最も凄みを感じ、流石小山田圭吾と感じた作品。

 

〈おすすめ曲・夢の中で〉

夢の中で
Cornelius
2017/06/28 ¥250

 

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2位 私立恵比寿中学『エビクラシー』

 ”音楽”でアイドルが勝負した本気のアルバム

シングル曲は1曲も収録されていない。すべてアルバムで初出の曲ばかり。これってアイドルとしては珍しいんですよ。例えば今年出た欅坂46のアルバムは実質カップリングも含めたシングルの詰め合わせみたいなものだったし、他のグループも収録曲の半分はシングルや既存曲ということも珍しくない。

 

楽曲のジャンルも幅広く、しかもその1つ1つがシングルとしてリリースしても問題ないぐらいに曲も歌詞もしっかりと作りこまれている。シングルが1曲も入っていない代わりに、シングルにできるキャッチーさと、聴きこんで楽しめるような高いクオリティの楽曲と演奏が詰めあわされている。

 

そして、音が良い。楽器のちょっとした弾き方のニュアンスもわかるぐらいに綺麗に録音されているし、音の分離も良い。アルバムを通して音が良いんですよ。そして楽曲提供者も演奏へ参加しているミュージシャンも豪華で実力派が多い。

 

アイドルのCDは近年グッズ扱いされている部分もあるが、『エビクラシー』は純粋に良い音楽がそろったアルバムとして長く聴いてもらうため、楽曲も録音もミックスも”音”に関わる部分は徹底的にこだわっているように感じる。

 

ここまで”音”にこだわっているアイドルのアルバムはなかなかないと思う。

 

〈おすすめ曲・感情電車〉

感情電車
私立恵比寿中学
2017/05/31 ¥250

 

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1位 神聖かまってちゃん『幼さを入院させて』

 最高傑作かもしれない

 個人的には神聖かまってちゃんが過去最高傑作をこのタイミングでリリースしてきたと思っています。

 

破天荒なイロモノバンドだと思われがちな部分があるけども、音楽は個性的で真剣に作っていたりする。過去の作品は良い曲や個性的な曲がそろっていたけど、洗練されていないように感じることもあった。

 

しかし、今作はバンドとしてかなり成長している。そしてバンドの良い部分がすべて詰まっているような作品。

 

破天荒で狂気的な部分も、ダウナーな部分も、切ない部分も、ポップな部分も、かっこいい部分も。神聖かまってちゃんの魅力が凝縮されている。バンドとしての技術が向上し音楽の知識もより深くなったのか、今まで表現したくてもしきれなかったであろう表現もできるようになっているようにも思う。そのため今までなかったタイプの曲や演奏や表現もある。

 

バンドとして進化した神聖かまってちゃんが作った今までの集大成の作品でもあり、神聖かまってちゃんにしか作れない個性的な作品でもあり、新しい挑戦でもある作品ではないだろうか。

 

〈おすすめ曲・まいちゃん全部夢〉

まいちゃん全部ゆめ
神聖かまってちゃん
2017/08/25 ¥250

 

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 たくさん良いアルバムがある

 1位 神聖かまってちゃん『幼さを入院させて』

 2位 私立恵比寿中学『エビクラシー』

 3位 Cornelius『Mellow Waves』

 4位 ヤなことそっとミュート『BUBBLE』

 5位 嵐『untitled』

 6位 溶けない名前 『制服甘露倶楽部』

 7位 民謡クルセイダーズ『エコーズ・オブ・ジャパン』

 8位 CHAI 『PINK』

 9位 台風クラブ『初期の台風クラブ』

10位 indigo la End『Crying End Roll』

 

 順位をまとめると上記になります。あくまで個人的なランキングで、もしかしたら気分で順位がまた変動するかもしれないです(笑)

 

ランクインさせなかったアルバムでも良いアルバムはたくさんあったんですよ。米津玄師は編曲が凄いと思うし、BiSHは新しい挑戦もしていて素晴らしかったし、GRAPEVINEも演奏が渋くてかっこよかったし、GLAYやACIDMANも良かった。

 

毎年多くの新作が発売されているので、人それぞれでお気に入りの作品も違うと思う。自分の聴いていない音楽にも良いと思えるものがあるかもしれない。もしもこの記事を読んでくださった方で「他にも良い作品あるよ!」という人がいたら教えてくれたら嬉しいです。

 

明日か明後日には『楽曲大賞』を選んだ記事も書こうかと思います。