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『売れた音楽=良い音楽』ならば『売れない音楽=悪い音楽』なのか?~竹原ピストルをバカにした自分の親への反論~

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忘れられない出来事

 

当時は売れているグループではなかった。流行りの音楽とは違う系統の音楽だったから友達にもなかなか理解してもらえなかった。でも当時中学生だった自分に突き刺さる音楽だった。たしかラジオで流れている曲を聴いて一聴き惚れした。それが野狐禅。

 

2017年の紅白歌合戦に出場が決まった竹原ピストルが所属していた2人組音楽ユニットだ。今の竹原ピストルと同じように野狐禅も突き刺さるような歌声と歌詞だった。

 

そんな野狐禅のライブを中学生の始めて観ることができた。静岡サナッシュというライブハウス。200人ほどのキャパの会場には椅子が並べられていた。客入りが良いとは言えなかったと思う。自分を含めて20人ほどしかお客さんは居なかった。

 

それでも最高のライブだった。歌も演奏も素晴らしかったし、CDで聴いている以上に音も言葉も突き刺さった。会場のお客さんの雰囲気も良くて皆思い思いに真剣に音楽を聴いていた。約3時間の最高のライブだった。

 

家に帰ってライブの興奮も覚めず、親にライブの感想を話した。しかし、親の反応でライブの余韻も興奮も覚めてしまった。

 

「客が少なかったのは音楽が良くないからだろ。音楽が良ければお客さんも多いだろ。そんなのを好きになるとか、お前もセンスがないよなあ」

 

これは感想を話した後に親から言われた言葉だ。何も言い返せなかった。確かに良いと思う人が多ければチケットは売り切れていただろう。悔しくなった。悲しくなった。

 

しかし、人気があるミュージシャンならば必ず良い音楽をやっているのだろうか。ヒット曲は全て名曲なのだろうか。逆に人気のないミュージシャンの売れない曲は全て悪い曲なのだろうか。

 

今の自分ならこれについて自分なりの答えを出せる。

 

 

世界一美味いラーメンとは?

 

一番売れてるものが一番いいものなら、世界で一番美味いものはカップラーメンになっちまうよ

 

上記はザ・クロマニヨンズのボーカル、甲本ヒロトの有名な言葉だ。とは言ってもヒロトが言ったという明確なソースがないので事実かはわからないが、これは個人的にかなり本質をついていると思う。

 

カップラーメンの中でも売上が1位の商品は日清カップヌードルだ。

 

カップヌードルは美味しいとは思うが、だからと言って世界一美味しいラーメンだと思う人はどれほど居るだろうか。

 

この話をすると「値段がラーメン屋とは違うから売れるのは当たり前」との意見も出てくるが、この言葉の重要な部分はそこではないのだ。

 

売れるための条件

 

 音楽に限らないが、商品やサービスが売れてヒットする理由は1つに限らず、様々な要因が絡んでくる。

 

1.商品力

2.販売方法

3.値段

4.マーケティング

5.使える経費の金額

6.タイミング

7.運

8.ブランド力

 

上記の項目はヒットする理由の一例で全てのヒットした商品に当てはまるわけではないが、重要な事の一部かと思う。ヒットを意図的に作るとしたらどれだけお金をかけられるかは重要になってくる。それは曲の良し悪し以上に重要になってくるかもしれない。

 

例えばカップヌードルの場合。世界初のカップ麺であり世界的大企業の日清の主力商品なのでブランド力もあり、使える経費も多いだろう。販売方法はラーメン屋のように店舗で調理する訳ではなく全国のスーパーやコンビニなどで販売している。値段も大量生産できるので安くできる。そしてマーケティングにも力を入れて話題性のあるCMを流したりと長く売れ続けるための努力をしている。

 

これは楽曲やミュージシャンを売り出すときにも当てはまる。例えばメジャーの大きな会社ならば広告やタイアップを大々的に行うこともできるし販売網もインディーズレーベルよりも広いので多くの店舗で販売ができる。

 

どれだけ良い曲を作ったとしても、それを知ってもらう機会がなければヒットすることはない。さらに言うと、やみくもに宣伝するのではなく、その音楽を求めている人に知ってもらう機会を作らなければヒットすることはないのだ。

 

野狐禅はなぜ売れなかったのか

 野狐禅もメジャーデビューをしテレビ番組出演やCMやドラマのタイアップもあった。それほど大きなタイアップではなかったがメジャーデビューしてもテレビの音楽番組にも出れずタイアップも貰えないアーティストも多いので、野狐禅は恵まれていたのかもしれない。

 

しかし、売れなかった。

 

オリコンランキングでもシングルは50位以下。東京のワンマンライブでも1000人集まるかどうか程度の集客。もちろんアルバムも1万枚も売れない。

 

宣伝を行ったりタイアップを取ったりテレビに出演しても、どのようにその音楽やミュージシャンの存在を届けるのかが重要なのだ。

 

野狐禅が出演した音楽番組は『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』だ。この番組はダウンタウンが司会をしており、バラエティ色も強く若者に人気の音楽番組だった。この番組に出演した野狐禅は『自殺志願者が線路に飛び込むスピードで』というラジオでは放送自粛されていた過激なタイトルと歌詞の曲をパフォーマンスした。

 

 

自殺志願者が線路に飛び込むスピード (アルバムバージョン)
野狐禅
2003/12/03 ¥250

 

 正直、この曲はキャッチーなメロディでもないし一部の人にとっては不快にすら感じる歌かもしれない。これをゴールデンタイムの音楽番組で歌っても多くの人に届くことはなかった。

 

伊藤園のCMタイアップもあった。CMで使用された楽曲は「カモメ」という曲だ。この曲はミドルテンポのとても沁みる名曲なのだが、CMタイアップに向いているとは言い難い。

 

カモメ
野狐禅
2004/11/17 ¥250

 

 「僕はもう疲れ切ってしまってね」というフレーズから始まる重めの歌詞の曲。歌詞には「遺書」という言葉も出てくる。歌詞の内容もキャッチーで覚えやすいわけでもない。一部を切り取られてCMで使われても印象にはあまり残らないような、フルで聴いてこそ曲の良さも伝わるような楽曲だ。そのためCM曲になっても話題になることも野狐禅や曲の存在が広く認知されることもなかった。

 

このように野狐禅はそれなりに売り出されてはいたが売れなかったのだ。それは当時流行とは違う音楽性であるフォークソングをやっていたからかもしれないし、宣伝方法や売り出し方に問題があったのかもしれない。運やタイミングかもしれない。

 

竹原ピストルはなぜ売れたのか

 2009年に野狐禅は解散し、その後竹原ピストルはソロ活動を始めた。活動当初は野狐禅と同様それほどCDも売れていなかったしライブも集客できていたわけではなかった。しかしソロ活動から8年後の2017年、NHKの紅白歌合戦に出場する。アルバムはオリコン上位にランクインし、ライブ会場も大きくなり、チケットも入手が困難になってきた。

 

なぜ竹原ピストルは今になって売れたのだろうか?

 

竹原ピストルも野狐禅と同様に近年になってからCMやドラマのタイアップを取っている。CMタイアップで使用された楽曲は「よー、そこの若いの」という曲だ。

 

よー、そこの若いの
竹原ピストル
2015/10/09 ¥250

 

 この曲は住友生命のCMソングとして放送されていた。この曲はサビの歌詞やメロディがキャッチー印象に残りやすい。CMの内容と曲の歌詞や雰囲気もあっており、多くの人に届く曲になった。

 

 「Forever Young」という曲はドラマ主題歌になった。「バイプレイヤーズ 〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜」というドラマだ。この曲もドラマの内容や雰囲気と合っており、ドラマの視聴者にも印象に残り竹原ピストルの魅力が視聴者に伝わるようなタイアップだった。

 

Forever Young
竹原ピストル
2017/01/25 ¥250

 

 それぞれのタイアップが竹原ピストルの楽曲の雰囲気とも合っており、魅力が多くの人に伝わるようなタイアップだった。


これは運が良かったのかもしれないし、野狐禅の時以上にスタッフや関係者が竹原ピストルの音楽を深く理解し、どうすれば多くの人に伝わるのかを考えてタイアップを取ったのかもしれない。タイアップ先の企業やドラマが竹原ピストルの音楽を理解した上で依頼をしたのかもしれない。野狐禅の時と同じようにドラマやCMのタイアップを行ったとしても、タイアップ先やタイアップの方法によっても曲やアーティストの認知度は変わってくるのだ。

 

そしてタイミングも良かったのかもしれない。

 

ソロになってからも地道に全国のライブハウスでライブを行い、世間的には知名度はなかったかもしれないが、音楽ファンの間では竹原ピストルの名前は知られるようになっていた。そして松本人志や笑福亭鶴瓶など芸能界でも竹原ピストルのファンはおり、メディアでも紹介してくれる機会も少なからずあった。

 

少しずつ評価され始めていたところに良いタイアップがついたことで一気に注目され、住友生命のCMタイアップから2年で紅白歌合戦への出場を決めるほど竹原ピストルの存在や楽曲が世の中に浸透したのではないだろうか。竹原ピストルの地道な活動があったからこそではあるが、良いタイミングで注目されるチャンスをつかんだのだと思う。

 

売れている音楽は良い音楽である

では今回の記事で最も伝えたいことである、「売れた音楽=良い音楽」なのかという部分。これに関しては個人的には売れた音楽は全て良い音楽だと思っている。ヒットするということは多くの人の心をつかんでお金を出してまで聴きたいと思わせたからだ。それが多くの広告費を出して宣伝したり大きなタイアップが理由だとしてもだ。たった1人でも良いと思う人がいるのならば、それは良い物だと思う。

 

しかし、「売れない音楽=悪い音楽」かというとそれは違うのではと思う。

 

・多額の経費をかけ宣伝したことで100万人が”流行っているから”という理由で買った曲

・殆ど宣伝していないが1万人に「これは良い曲だ!」と思って買った曲

・全く宣伝されていないが偶然曲を耳にした1,000人が「感動した。一生聴き続ける大切な曲だ」と思って買った曲

 

例えば上記の3つの曲があったとしよう。1番多くの人に届いた曲はもちろん100万枚売れた曲だ。しかし、その曲が多額の宣伝費をかけ大型タイアップをつけ多くの雑誌やメディアで取り上げられた曲だとしよう。100万枚売れたとしても「流行っているから」という理由で購入した人が多数だと仮定してみよう。もしかしたら、その曲はヒットしたものの長年に渡り多くの人に聴かれる曲にはならないかもしれない。

 

もしかしたら、1万人が「これは良い曲だ!」と思って買われていった曲の方が、100万枚売れた曲よりも多くの人に長年に渡り聴かれ続けるかもしれない

 

もしかしたら、1000人が「感動した」と思って買われた曲が、100万枚売れた曲よりも1万枚売れた曲よりも、多くの人に大切にされ愛される曲になっているかもしれない。

 

売れるか売れないかは運やタイミングもあるし、どれだけ”知ってもらう機会”を作れるかという部分が大きいということだ。運が悪く”知ってもらう機会”を作れなかったミュージシャンは名曲を作ってもヒットはしないだろう。存在を知られていないのだから。

 

つまり、売れない音楽は悪い音楽なのではなく、知ってもらう機会がなかっただけで良い曲もあるのだ。

 

それでも売れない音楽は良くない曲だと思うならば

 

それでももしも売れている音楽が良い音楽だと思うのならば、日本一売れた「およげ!たいやきくん」は日本一良い曲になるので、この曲をエンドレスリピートすれば良いと思う。

 

およげ!たいやきくん
子門真人
2008/03/05 ¥250

 

もしも売れている音楽が良い音楽ならば、世界一売れたビング・クロスビーの「ホワイト・クリスマス」を夏にも聴き続ければいいと思う。

 

White Christmas
ビング・クロスビー
1945/01/01 ¥250

 

上記の2曲は名曲だとしても、この2曲だけで満足できる人がどれほどいるだろうか。殆どいないのではと思う。

 

音楽の良し悪しは主観的なもので人によって感じ方や価値観も違う。実際に聴いて「良いか悪いか」を判断する人もいれば、人気や売上や話題性で「良いか悪いか」を判断する人もいる。

 

上手い下手はあるとしても良い悪いは客観的に評価することが難しい。だから自分が好きだと思ったものは自信を持って良い音楽だと思って聴けば良いと思うし、逆に自分が良いと思わない音楽を他人が好きでも、それを否定し、わざわざ良いと思っている人に伝える理由も必要もないだろう。

 

そういえば、うちの親は話題になっているからと竹原ピストルの新しいアルバムを買ったそうです。CMで流れてる曲が入ってないと怒ってました。