オトニッチ-音楽の情報.com-

ニッチな音楽情報と捻くれて共感されない音楽コラムと音楽エッセイ

大森靖子とTK(凛として時雨)のコラボ作『draw (A) drow』を聴いて感じたコラボの難しさ

Hatena Feedly

家系ラーメンとパンケーキ

 

個性には様々な個性があるわけで、合う個性と合わない個性があったりする。

なんとなく合いそうだなと思う個性の組み合わせもあると思うが、その個性が合うかどうかは実際に合わせてみないとわからない。

そんなことを大森靖子の新曲『draw (A) drow』を聴いて思った。

この曲は凛として時雨のTKが作曲と編曲とプロデュースを務めた曲だ。

 

大森靖子も凛として時雨のTKもかなり個性的なミュージシャンだ。

そして両者の楽曲の方向性は似ているとは言えないとは思う。

この2組の音楽を組み合わせるってことは、家系ラーメンとお洒落なパンケーキを組み合わせて美味しいメニューを作れといっているようなものだ。

 

強い個性を持っているけども方向性が全く違う2組。

この2組が一緒にやると聞いたとき、大森靖子の音楽と凛として時雨の音楽が一緒に鳴っている姿を想像できなかた。

凛として時雨のドラマーのピエール中野は大森靖子と何かといっしょにいるけれど、それはまた別の話。

 

 

大森靖子はコラボレーションを何度も行ってきた

 

大森靖子と他のミュージシャンやアーティストがコラボレーションすることには疑問は持っていない。

それは大森靖子自身が去年からも頻繁に行っているし、他のアーティストへの曲提供も多いからだ。

 

去年リリースしたシングル曲3曲は他のミュージシャンやアーティストとのコラボ作だ。

小室哲哉、新生かまってちゃんのの子、ゆるめるモ!のあのちゃん、生ハムと焼うどんといったメンバー。

 

しかし、過去のコラボと今回のTKとのコラボとは曲作りの方法で違う部分がある。

今作でのコラボレーションの方法は上手くいけば凄い作品になる方法だとは思うが、失敗する可能性もある挑戦的な方法だったのではと感じる。

 

大森靖子の過去のコラボレーションの方法について

 

小室哲哉は『POSITIVE STRESS』という曲を作曲し大森靖子に提供した。

編曲は過去に多くのアニソンやアイドルソング、J-POPの編曲を行った大久保薫。

 

POSITIVE STRESS

POSITIVE STRESS

  • 大森靖子
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

小室哲哉は音楽プロデューサーとして多くのヒット作を作ってきた。

 ライブやレコーディングで演奏をすることもあり、小室サウンドと言われる特徴的なメロディやサウンドもあるが、プロデューサーとしてアーティストの魅力を引き立てるような曲を作ることは得意分野の1つだろう。

また、この作品は編曲家としての仕事を主に行っている大久保薫の編曲。

 

つまり、コラボレーションと言っても他の作曲家が大森靖子に楽曲提供をした際、どのように大森靖子の個性や色を表現するかというテーマもあったのではと思う。

 

そして新生かまってちゃんの中心メンバーであるの子が提供した作品は『非国民的ヒーロー』。

の子が作曲とコーラスを行い作詞は大森靖子が行っている。

編曲は『POSOTIVE STRESS』と同様に大久保薫。

 

非国民的ヒーロー

非国民的ヒーロー

  • 大森靖子
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

 新生かまってちゃんのの子も強い個性を持っているアーティストだが、持っている色は大森靖子に近い部分もあるように感じる。

また、の子は女性が歌うとより魅力が増すようなメロディを作ることが得意ではと思う。

過去にの子は川本真琴や大亀あすかをボーカルにした楽曲でコラボを行ったが、神聖かまってちゃんの曲の中でも人気作になっている。

 

フロントメモリー feat.川本真琴

フロントメモリー feat.川本真琴

  • 神聖かまってちゃん
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

 の子自身は女性シンガーと相性も良く、大森靖子とは対バンも何度か行いライブではいっしょに演奏をしたこともあり、持っている個性に近い部分もあるので誰しもが組み合わせが良さそうだと思うコラボだったのだろう。

ハンバーグにカレーをかけたら美味しいといった感じに。

 

また、編曲を大久保薫が行っているので曲の持つ個性が大森靖子側にもの子側にも極端に偏らないようにバランスをとれるように調整しているようにも感じる。

 

そしてゆるめるモ!のあのちゃんとコラボした『勹″ッと<るSUMMER』と生ハムと焼うどんとコラボした『YABATAN伝説』について。

この2曲は『POSITIVE STRESS』や『非国民的ヒーロー』ともコラボのきっかけや方法が違う。

 

この2曲は作詞作曲は大森靖子が担当している。

つまり大森靖子が他者のために曲を作ったり、自分の曲の味付けの1つとしてコラボレーションをしたのだ。

そのため大森靖子の色が濃くでたところで問題はないし、そこにいつもと違うアクセントを加える方法としてコラボ相手がいるような印象を感じた。

 

『draw (A) drow』のコラボレーションの方法について

 

過去のコラボレーション作品と違う部分は編曲もコラボ相手であるTKが担当していることだ。

さらにサウンドプロデュースもTKが担当している。

今までのコラボは編っき作曲担当とは違う編曲家が担当しており、それによって大森靖子とコラボ相手とのパワーバランスを調整していたように感じる。

 

しかし、今作はそういったバランスをとってくれる第三者もいない。

その結果できた曲が下の曲だ。

 

draw (A) drow

draw (A) drow

  • 大森靖子
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

凛として時雨を知っていばく人ならば1秒で感じるだろう。

サウンドは完全に凛として時雨だということを。

意識的に時雨の存在を知っている人のイメージする『凛として時雨の曲』にしているようにも感じる。

 

参考までに凛として時雨の曲も聴いてみて欲しい。

 

Telecastic Fake Show

Telecastic Fake Show

  • 凛として時雨
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

大森靖子から「プロデュースを意識せずにいつも通りで」というような依頼がTKにあったのかもしれない。

 インタビューなどは読んでいないのでその辺の事情はわからないが、プロデュースする雰囲気を微塵もなくTKが全力で自分の得意とする作曲編曲方法で得意とする方向性の曲をつくったように感じる。

そして「できるものならこの曲に歌詞をつけて歌ってみろよ」と大森靖子に挑戦状を投げつけてるかのような曲だ。

 

それに対して大森靖子は全力で応え、大森靖子にしか書けないような歌詞を乗せて、大森靖子の歌唱方法でこの曲を歌いこなしてしまった。

 

大森靖子が歌う事で、今までの凛として時雨とも違う今までの大森靖子とも違う、お互いの新しい魅力が感じられる曲になったと思う。

そして、お互いの個性の強さや才能を改めて実感できる曲になったと思う。

 

歩み寄ったわけでもないのに、むしろ個性を無理矢理ぶつけ合ったような形にも関わらず、1つの曲としてきちんと完成させてしまった。

家系ラーメンとお洒落なパンケーキを組み合わせて新しい美味しいメニューを作り上げてしまった。

 

なぜ意外なコラボが成功したのか

 

個人的な好みもあるとは思うが、大森靖子と凛として時雨のTKとのコラボは大成功だと思っている。

この曲が好みに合わなかった大森靖子ファンでも、今までと違う大森靖子を感じたのではと思う。

 

SNSやネットの掲示板ではこの2組のコラボは相性が悪いのではと言う人が多かった。

自分もそのように思っていた。

しかし、蓋を開けてみれば良い意味で予想は裏切られた。

 

それはコラボをするにあたってお互いが自分のポリシーや個性やプライドを決して曲げず、全力で作ったからではないだろうか。

 

今までの大森靖子のコラボも個性的な相手ばかりだったが、編曲家やプロデューサーが別にいたことで、お互いの個性を上手く調整して完成度の高いポップスにしていた。

それも1つの方法として良いと思うし、コラボをするとしたら成功をさせやすい方法だと思う。

 

今作はそういった調整をする第三者がいなかった。

過去のコラボ作品は個性的なコラボ相手でも、編曲家が大森靖子のイメージや歌の届け方に合うように調整していた。

今作ではTKが作った凛として時雨のサウンドに対して、大森靖子は自分の個性をぶつけるしかなかった。

その結果今までの大森靖子の作品にはない空気感を持った歌が生まれただろう。

 

コラボレーションの難しさ 

 

他のアーティストも含め、コラボレーションは話題にはなりやすいが、作品として全てが成功するかというとそういうわけではないと思う。

それは冒頭にも述べたせい個性の相性の善し悪しがある。

 

無難にやろうとすればそれなりの物はできるとは思う。

しかし、その場合はコラボする者のどちらかが妥協したり相手に合わせる必要があると思う。

 しかしそれは成功でも失敗でもなく、ただの〝無難〟な作品になると思う。

悪くはいけともへ特別良くもなく新しさも面白さも感じないような作品。

自分の個人的な好みもあるが、コラボレーションや楽曲提ども悪くはないけどもそれぞれが別々にやった方が良いんじゃないかと思う曲は何曲も聴いたことがある。 

それは、無難に受け入れられる物を作ろうという意識がどこかにあったんじゃないかなと思ってしまう。

 

今回の大森靖子とTKのコラボは〝無難〟 とは真逆のコラボだと思う。

TKは大森靖子に合わせようとせず、TKの個性や才能が爆発したような曲だ。

それに対して大森靖子は自分の歌い方で大森靖子にしか書けない歌詞を書いた。

それが無難にやろうとしたら生まれないような、意外性や衝撃のある作品になった。

 

もしかしたら計算した上で作ったのかもしれない。

もしかしたら再度同じことをやろうとしたらお互いの才能がぶつかってしまい上手くいかないかもしれない。

 

それでも『draw (A) drow』は大森靖子と凛として時雨のTKで本気に一緒にやった結果生まれた奇跡みたいな曲だて思ってしまう。

完成するまで苦労したり失敗する可能性も高いのかもしれないが、どうせコラボレーションして曲を作るならば、自分は無難なコラボレーションよりも『draw (A) drow』のようなコラボレーション曲をやって欲しいと思う。

 

ところでこの記事を書いていて1つ失敗したなと思うことがある。

〝家系ラーメンとパンケーキを組み合わせてメニューを作る〟っていう例え。

冷静になると全然上手く例えられていないけど、内容的に今更変えられない・・・・・・,

1人でやっていてもこんな失敗もあるのだから、人と1つのものを作り上げるって物凄く大変だと感じたりする。