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コレサワの”たばこ”の歌詞がぶっ飛んでて切ない理由を説明する【意味を考察】

Hatena Feedly

コレサワって知ってます?

 

2017年にメジャーデビューしたシンガーソングライターの中でも特に異彩を放っている人がいる。

それがコレサワ。

 

まずは見た目。

なぜか頭に着ぐるみをかぶっている。

これだけでインパクトある。

 

 

曲を聴かなくても見た目だけは覚えちゃうよね。

 

そして肝心の曲に関してはどうなのか。

曲はポップなアレンジの曲やキャッチーなメロディが多い。

完成度の高いJ-POP.

 

個人的には歌詞に他にない視点や内容のものが多いかなと感じる。

 

あたしを彼女にしたいなら

あたしを彼女にしたいなら

  • コレサワ
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

あたしを彼女にしたいならという曲。

この曲は「付き合う前の西野カナのトリセツの主人公」が言いそうな感じの内容の歌詞。

「この内容でOKだよ!」と男が言ったら今度はトリセツみたいなことを言いそうなヒロインの歌。

ディスってるように見えるけど、視点が面白いって意味で褒めてるからね。

 

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君のバンド

君のバンド

  • コレサワ
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

”君のバンド”という曲も歌詞の視点が面白い。

彼氏は人気バンドが好きだけど主人公はあまり売れていないバンドが好き。

だから自分の好きなバンドが売れたら彼氏もそのバンドを好きになるだろうから、好きなバンドが売れたらいっしょにライブに行きたいという曲。

かわいらしい。

 

さだまさしなどのフォークソング世代のソングライターや、アングラなところだとミドリカワ書房など、こういうストーリー仕立ての歌詞は昔からあったとは思う。

コレサワもこういったソングライターに近い方向性だと思うが、女の子のかわいらしさや現代の若者の視点を取り入れているので新しさも感じる。

 

そんなコレサワの曲の中で、異質な曲が1曲ある。

いや、普通に聴く分には異質ではない。

しかし、よくよく聴いてみると、とんでもなく凄い歌詞だなと思う曲がある。

 

それは『たばこ』という曲だ。

 

 

コレサワのたばこの主人公について

 

👇画像をクリックで動画になります

 

まずは“たばこ”の歌詞に目を通してほしい。

 

コレサワ たばこ 歌詞

 

ぱっと見た感じではJ-POPではよくあるタイプの失恋ソングに読めると思う。

同棲していたカップルが別れて女性が出ていったという内容だ。

別れた理由については歌詞の中では具体的には書かれていないが、内容的にお互いの価値観や気持ちのすれ違いが原因のようだ。

毎日世界中のどこかで起こってそうなカップルの別れ方の定番みたいな内容。

 

しかし、歌詞に少し引っかかる部分がある。

それは歌詞の主人公が男だということだ。

 

歌詞の内容で気になる部分は主人公がとても女々しいところだ。

女々しいというよりも、もはや女性の視点にも感じる。

考えや思考や感情の表現がとても女性的だ。

この歌詞の主人公が女性ならば何の違和感もない普通の失恋ソングになるのだが、主人公が男性であることによって、歌詞に違和感が出てくる。

 

しかし、その違和感は決して悪いことではない。

その違和感があるからこそ、歌詞の世界観に深みが増しているのだ。

 

主人公の女々しさについて

 

再度言うが、この主人公は一人称に”僕”を使っているので男性だと思われるが、行動や感情がとても女性的。

特に前半の歌詞では主人公の女性らしさが表れている。

 

マイペースで よく寝坊する 君のことを想って
5分早めた 家の時計 あぁ もう意味ないな
たばこの嫌いな 僕を気遣って
ベランダで吸ってたっけな
カーテンが揺れて 目があつくなった
もうそこに 君はいない

 

寝坊する彼女のために家の時計を早めるという献身的な行動。

通常こういったことをしている様子を歌詞で表現する場合は、女性が行うことが多い行動ではないだろうか。

歌詞でも映画でもドラマでも、カップルや夫婦において”マイペースでよく寝坊する”方は男性であることが多いような気がする。

 

そして彼氏はたばこを吸わないが、彼女はたばこを吸う。

しかも男の方はたばこを吸わないだけでなく”苦手”なのだ。

J-POPの歌詞と考えると、通常は男性がたばこを吸う側で女性が吸わなくてたばこを嫌っている場合が多い。

これは一般のカップルや夫婦でもこのパターンが多いと思う。

 

もちろん女性がたばこを吸って男性は吸わないカップルも世の中にはたくさん存在するとは思う。

しかし小説でもドラマでも歌詞でもこれは男女が逆の場合が多いし、男女の行動や価値感の違いを表現する場合でも男性がたばこを吸い女性が吸わないという情景描写が多い。

 

『もっとちゃんと僕を見ててよ もっとちゃんと』って
その言葉が 君には重かったの?
『もっとちゃんと僕を見ててよ もっとちゃんと』って
言わなければ 君はここにいたかな

 

こういった「わたしのことをもっと見てよ!理解してよ!!」と言うアピールは男性は女性側にはあまり言わないように感じる。

どちらかと言うと、女性側が男性側に言いそうな台詞だ。

 

このように男性側の方が女性のような行動をしたり女性的な感情の起伏があるように感じる。

 

彼女はどのような女性なのか

 

この歌詞は主人公の主観で進んでいく内容なので、部屋を出ていった彼女がどのような女性だったのかはっきりとはわからない。

わかることは、たばこを吸っていたということぐらい。

 

芸術や創作の表現でたばこが出てくるときは、男らしさを表現する時や、アウトローさ、かっこよさなどを表現する場合が多い。

この歌詞の主人公の男性は上記で述べた通り、女々しいを通り越して女性的な感性の持ち主だ。

それに対して”たばこを吸う”女性側の方が男性的な部分を持っていて、主人公と真逆の性格であることを「たばこを吸う」という部分で表しているように感じる。

 

そして歌詞の前半に書いてあるとおり、女性側はマイペースだったのだろう。

それゆえに男性に理解してもらえない部分もあり「もっとちゃんと僕を見ててよ」と言われてしまったのかもしれない。

このマイペースさも女性的と言うよりも男性的な部分に感じる。

 

つまり、”女性的な部分を持った男性”と”男性的な部分を持った女性”との失恋の話なのだろう。

そのため、内容としてはありがちな失恋の歌詞にも感じるが、他の同じような失恋ソングよりも印象に残る歌詞になっているのかもしれない。

 他の失恋ソングでは男女の立場が逆であることが多いからだ。

 

このカップルは元々上手くいかなそうだった?

 

このカップルは、価値観や考えが少しづつすれ違って別れに至ったようにも感じる。

しかし、実際はそうではないのかもしれない。

 

女々しくてかまってほしいたばこが嫌いな男性。

マイペースで男勝りな性格のたばこを吸う女性。

 

性格も価値観も好きなものも違う2人。

もしかしたら最初から上手くいく関係ではなかったのかもしれない。

他人から見たらすぐに別れそうな2人に見えていたのかもしれない。

 

それでも何かがきっかけで付き合って同棲した2人。

別れることは必然だったのかもしれないけども、別れれば傷つく。

 

お似合いではない2人が付き合って別れたからこそ、お似合いの2人が別れることとよりも切なさが強いのかもしれない。

 

だって、復縁することはなさそうなのだから。

 

彼女がたばこを置いていった理由

 

君が置いていったタバコ
僕の大嫌いなものなのにどうして
火をつけてしまった

 

上記は後半の歌詞だ。

彼女が部屋を出ていったときに、なぜたばこを忘れていったのだろうか。

それはただ忘れただけかもしれない。

しかし、理由があってあえて置いていったのかもしれない。

 

もしかしたら”あえて”たばこを置いていったのかもしれない。

 

前半の歌詞には下記のようなフレーズがある。

 

その時思った 僕は君のこと
どれくらい分かってたんだろ
一番最初に 浮かんできたのは
君の好きな タバコの名前

 

主人公が元カノのことを考えたときに最初に浮かんできたものは”たばこの名前”だ。

これが浮かんだ理由は、部屋に唯一彼女が残していったものがたばこで、無意識にそれが目に入ってしまったからかもしれない。

 

彼氏はたばこが嫌いだ。
その彼氏が嫌いなたばこをあえて置いていくことで「あなたのことを嫌いになりました」というメッセージを込めていたのかもしれない。

そして彼氏の嫌いなものを置いていくことで、思い出を嫌なものに変えてあげようとしたのかもしれない。

「僕た嫌いなたばこを置いていくなんて酷い女だ」と思わせてあげたかったのかもしれない。

これは、彼女から彼氏への恨みつらみも優しさも両方含んだメッセージなのかもしれない。

 

このように考察してみると、より切なく感じる歌詞だ。

 

さりげなく深い表現をする凄み

 

この歌詞についてどこまでコレサワが意図して書いていたのかもわからない。

コレサワ自身が女性なので女性目線で書いたが、メロディに歌詞を乗せた時に”僕”という言葉が都合よかっただけかもしれない。

 

しかし意図していたとしても、偶然だったとしても、主人公が男だったことでこの歌詞には深みが増したのではと思う。

一見するとよくある失恋ソングにも感じるが、どこか引っかかりがあって印象に残る歌詞で、YouTubeでは200万再生を超えるコレサワの代表曲にもなっている。

他のコレサワの歌詞は最初から他のソングライターとは違う視点での歌詞だとわかるが、たばこの歌詞に関してはそういったものではない。

 

わかりやすく他のソングライターと違うことをするよりも、気づかれにくいがさり気なく他のソングライターと違うことを行って個性を出すことの方がより難しいと思う。

コレサワのたばこの歌詞には、後者の”さり気なく個性を出す”ことに成功している。

そしてリスナーも何となく聴いているつもりでもより印象に残る。

だからコレサワの他の曲と比べると異質とも感じる”たばこ”がコレサワの代表曲としてあげられることが多いのかもしれない。

 

まだメジャーデビューしたばかりだが、じわじわと知名度と人気を上げているコレサワ。

もしかしたらコレサワは今後のJ-POPシーンにおいて、そのぶっ飛んだ才能で大躍進するかもしれない。