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【レビュー・視聴】原田知世『音楽と私』伊藤ゴローの編曲が素晴らしいアルバムの感想

原田知世を自分は知らない

 

20代の自分は原田知世のことをあまり知らない。

女優としてはたまに見るから存在は知っているけど、若いころは知らない。

歌手をやっていたということも、以前高橋幸宏が中心に結成されたpupaが話題になった時にボーカルをやっていてそれで知ったぐらい。

 

調べてみると女優デビューと歌手デビューを同時にし、アイドル的な人気だったらしい。

なんとなく聴いてみて知っている曲は『時をかける少女』ぐらい。

それもサビしか知らなかった。

 

そんな自分が原田知世のアルバムを聴いてみた。

デビュー35周年記念のセルフカバーベスト『音楽と私』。

なぜ聴いたのかというと、タワレコの視聴機で他のCDを視聴しようと思ったら、間違えて原田知世の『音楽と私』を再生してしまったからなのだけども。

 

でも、音楽というものは、こういった突然の出会いで感動したりもするんだよね。

1曲目の音が視聴機のヘッドフォンから流れた瞬間、「これはすごいアルバムかもしれない」と思った。

歌のメロディが良いことはもちろん、楽器の音、編曲、ボーカル、すべての完成度が高い。

 

原田知世の世代でもないし詳しくもない人間が聴いても良いと思ったんだ。

このアルバムは多くの人に聴いてもらいたい。

 

1曲ずつ自分の感想とレビューをしてみる。

 

01.時をかける少女

 

作詞:松任谷由実

作曲:松任谷由実

 

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アルバムの1曲目。

そして自分がタワレコの視聴機で聴いて、1秒で心を持ってかれた曲。

 

何が凄いかと言ったら、オーケストラアレンジが素晴らしい。

壮大なのに、音を重ねまくったりするのではなく、音の隙間があって、その隙間が心地よい。

そして、そこに原田知世のボーカルが入ってくる。

とても良い声。

そして楽器の音もとても良い。

 

このオーケストラアレンジは聴いていてそれほど難しい演奏をしているわけではないように聴こえる(もしかしたら超テクニカルなのかもしれないけど)

それでも、歌のメロディだけでなく、楽器の一つ一つの音が耳に残る。

とても印象的な演奏だ。

 

編曲とプロデュースは伊藤ゴローという人。

ものすごい才能と実力を持っている人なのだろうと思う。

 

作詞作曲はユーミンなんですね。

 

02.ロマンス

 

作詞:原田知世

作曲:Ulf Turesson

 

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原曲のプロデュースはカーディガンズのプロデューサーのトーレ・ヨハンソンだったんですね。

オリジナルバージョンはどことなくかーディガンズの雰囲気を感じます。

 

そしてセルフカバーの今作は原曲のスウェディッシュポップの雰囲気とは違い、シティポップのような雰囲気。

オリジナルからアレンジを大きく変更はしていないように聴こえますが、雰囲気がこれだけ違って聞こえるのはすごい。

 

ドラムの音がかなり好みです。

調べたら、SOIL&"PIMP"SESSIONSのみどりんが叩いているらしいです。

 

03.地下鉄のザジ (Zazie dans le métro)

 

作詞:大貫妙子

作曲:大貫妙子

 

地下鉄のザジ

地下鉄のザジ

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ストリングスのアレンジが素晴らしいですね。

曲中ピアノの演奏は常にされているんですが、その間にちょうど良いタイミングで入ってくる。

とても良いアクセントになっている。

あえてなのかシンプルなピアノの演奏も歌を生かしていて良い。

 

少し歪んだギターも他の楽器とは違うアプローチだけど馴染んでいて良い。

 

作詞作曲は大貫妙子なんですね。

ポップスとして完成度高いのも納得です。

 

04.ダンデライオン〜遅咲きのたんぽぽ

 

作詞:松任谷由実

作曲:松任谷由実

 

ダンデライオン~遅咲きのたんぽぽ

ダンデライオン~遅咲きのたんぽぽ

  • 原田知世
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 ピアノのシンプルな演奏から始まる。

原田知世の声の良さを最大限に生かすようなシンプルなアレンジ。

 

アレンジを派手にしてインパクトを残すよりも、必要な音や必要な楽器のみを選別しているように感じる。

だからこそ曲やメロディはもちろん、それ以外の演奏されている楽器一つ一つの音の良さを実感できると思う。

 

こちらは時をかける少女と同様、作詞作曲はユーミン。

 

05.天国にいちばん近い島 

 

作詞:康珍化

作曲: 林哲司

 

天国にいちばん近い島

天国にいちばん近い島

  • 原田知世
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こちらもシンプルなピアノの演奏。

このアルバムではピアノはあえてシンプルな演奏をしているように感じる。

でも、すごい感情がこもっているんですよ。

演奏に。

ピアノのインストでも聴けちゃうぐらい。

 

オリジナルを聴いてみたら、いかにもな80年代アイドルソングな編曲でした。

それが今回のアレンジで感動的なバラードに変化したように感じる。

 

06.ときめきのアクシデント

 

作詞: 来生えつこ

作曲: 来生たかお

 

ときめきのアクシデント

ときめきのアクシデント

  • 原田知世
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ギターの弾き語り曲。

歌声とメロディの良さが際立ちます。

 

ギターは特別主張をするような演奏ではないのに、耳を傾けてみると色々なパターンの演奏で曲を色づけているように感じます。

 

それにして、原田知世、49歳とは思えないぐらい声が若々しく透き通っています。

 

07.愛のロケット

 

作詞:原田知世

作曲:トーレ・ヨハンソン

 

愛のロケット

愛のロケット

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ギターの音が今作のアルバムで最も目立っているかもしれない。

作曲はカーディガンズのプロデューサーだったトーレ・ヨハンソン。

ホーンのアレンジも良い。

ドラムもシンプルながら盛り上げてくれるノリの良い演奏。

 

演奏に良い意味で隙があるんですよ。

音をつめつめにしていないというか。

それによってノリや心地よさが発生している。

 

08.空と糸 -Talking on air-

 

作詞: LINDA HENNRIC

作曲:鈴木慶一

 

空と糸 -talking on air-

空と糸 -talking on air-

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バンジョーやアコーディオンを使ったアコースティックな音が心地よい。

歌詞は英詞ですね。

英語詞の方が声の良さはより感じれるような気がします。

 

アイルランドの音楽グループtoricolorが参加しているらしいです。

 

09.うたたかの恋

 

作詞:原田知世

作曲:伊藤ゴロー

 

うたかたの恋

うたかたの恋

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ジャジーな編曲でおしゃれ。

作曲はこのアルバムのプロデューサーで全曲の編曲をしている伊藤ゴロー。

 

この演奏でこの歌い方は若いミュージシャンにはできないだろうなと思う曲とアレンジ。

これは2014年に発表した曲らしいので、比較的最近の曲ですね。

 

10.くちなしの丘

 

作詞:辻村 豪文

作曲:辻村 豪文

 

くちなしの丘

くちなしの丘

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作詞作曲は京都出身でくるりと立命館大学の同級生だったバンドであるキセルの辻村 豪文。

曲を聴くとキセルの色も濃いです。

でも、キセルの音楽が原田知世の声ととても合います。

 

ギターとピアノの音が印象的なアレンジ。

オリジナルと聴き比べるとそれほど編曲は変えていないようには感じます。

でも、アコースティックな部分をセルフカバーではより前面に出ているかなと思う編曲。

 

個人的にこのアルバムで一番好きな曲です。

 

11.雨のプラネタリウム(初回盤限定のボーナストラック)

 

作詞:秋元康

作曲:後藤次利

  

雨のプラネタリウム

雨のプラネタリウム

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初回盤のみに収録されているボーナストラックです。

でもiTunesでは単曲でもダウンロードができるみたいですね。

 

そして、この曲、ボーナストラックにしておくことがもったいない完成度です。

なんじゃこのアレンジはって感じです。

 

どの楽器も意外な演奏をしているしテクニカルなこともしている。

ピアノも同じフレーズをリピートしているようで、リズム楽器としても機能していることが面白い。

そのためドラムのリズムパターンで冒険していても心地よいリズムでも聴けるし、面白くも聴ける凄さ。

弦楽器は緊張感を持った演奏でかっこいい。

 

これ、ボーナストラックなのに編曲は一番凝っているんじゃないですかね。

この1曲のためにも確実に初回盤を手に入れた方が良いですよ。

 

まとめ

 

冒頭でも言った通り、自分は原田知世を知らなかった。

そして、もし今回の35周年記念のアルバムが普通のベスト盤だったら、自分は興味を持たなかったと思う。

 

収録された曲は古いものだと35年前の曲だし、30年前や20年前の曲もたくさん収録されている。

収録曲の半分は自分が産まれる前の曲だ。

でも、古さは感じなかった。

むしろ、新しささえ感じた。

 

聴いてもらえばわかるように、セルフカバーをすることで編曲も大きく変わっている曲が多いようだ。

その編曲が現代に合わせたものというか、現代で聴いても新しささえ感じるような実験的な編曲だったり、凝りに凝っている完成度の高い編曲だったりする。

だからこそ、まったく原田知世の存在や音楽を知らない人でも新鮮に感じて、衝撃を感じるのだと思う。

 

そして、長い間多くの人たちに聴かれてきた曲が殆どだ。

純粋に良い曲が多いんだよ。

だから編曲で冒険してもきちんとポップスとして成り立っているのではと思う。

 

もしかしたらこのセルフカバーアルバムは今までのファンのためを想って作られた、マニアックなアルバムかもしれない。

でも、新しくファンを獲得できるだけの新規向けのアルバムでもあるんじゃないかなと思う

 

実際に、自分はこのアルバムで原田知世の音楽の魅力を知れたからね。

自分のように原田知世の世代ではない人にも聴いてもらいたい名盤だ。