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WANIMAが売れた理由はやっている音楽がJ-POPだから

WANIMAはとても順調なバンド活動をしている

さいたまスーパーアリーナのワンマンも成功させ、フェスのメインステージに出るようになり、テレビ番組やテレビCMに出るほどのバンドになったWANIMA

正直、売れる前からある程度注目はされていたんですよ。
横山健の設立したレーベルPIZZA OF DEATHの所属アーティストとして横山健とツアーを周り、全国流通のCDもリリースし、多くのラジオ局でヘビーローテーションされ、スペシャなど音楽専門チャンネルでもパワープレイされた。
多くのロックフェスにも出演し、パフォーマンスの良さでファンを獲得して行った。

 

しかし、これは他のロックバンドの人気が出るパターンのお手本のようなもので、多くの人気バンドは多少の違いはあれ、このようなレールを沿って売れた。

それでも、殆どのバンドはロックファンやフェスに行くような客層や若者にしか知名度がなかったりするが、同じようなレールをたどったWANIMAは他のバンド以上に売れている。

メロコアとは思えないほどの売れ方だ。

めざましテレビでもライブをやれば報道されるし、J-POPしか聴かない層にも知られるぐらい一般に認知されてきている。

 

なぜWANIMAは一般に浸透するほど売れたのか。

その理由を考えて見ようと思う。

 

WANIMAとは

やってみよう

 

 一応知らない人のためにも紹介をしておこう。

WANIMAは3人組のロックバンド。

ハイスタやモンパチに近い音楽性を持っているメロコアと呼ばれるジャンルのバンド。

横山健率いるPIZZA OF DEATH初のマネージメント契約バンドとしてデビューしたことで話題になり、そこからロックファンを中心に人気を上げていった。

 

キャッチーなメロディとシンプルでノリの良い演奏が特徴。

そして、前向きで明るい勇気づけるような歌詞も人気の秘密だろう。

ライブでのMCも面白くメンバーのキャラクターにも注目されることが多い。

 

代表曲は『ともに』や『やってみよう』、『THANK』などだ。

タイトルからWANIMAの魅力である前向きな感じがびんびん伝わってくる。

ライブは特に魅力的で楽しめるので、Blu-rayやDVDでもいいので体感してほしい。

 

過去に売れたメロコアバンドと

 WANIMAは”メロコア”と呼ばれるロックのジャンルに属しているといわれる。

メロコアとはメロディック・ハードコアの略で、音楽的特徴はパワーコードなどを使ったシンプルで激しいリフをバックにメロディアスなメロディで歌う音楽のことを主に言う。

 

WANIMA以前にもメロコアをやっていたバンドで売れたバンドはいくつかある。

というか、数年置きに定期的にメロコアブームが発生しているように感じる。

まるでミニ四駆のようだ。

 

メロコアは定期的にブームになり、その世代を代表するような売れたバンドがいる。

まずはHi-STANDARDことハイスタだろう。

日本でのメロコアのパイオニア的存在と言っても過言ではない伝説的なバンドでしょう。

そして、ELLEGARDEN

今の20代中頃の人はど真ん中の世代だろう。

それぞれ7~10年置きぐらいでメロコアブームが来ている。

 

そしてELLEGARDENの活動休止から約8年ほど。

今ではWANIMAが大人気のメロコアバンドになっている。

しかし、WANIMAの売れ方や売り方はハイスタやエルレとは、やはり少し違うのだ。

その部分について考察していこうと思う。

 

WANIMAは基本、笑顔

👇こちらのWANIMAのCDのジャケット一覧を見て欲しい。

UWANIMA CDジャケット一覧

👇ハイスタやのジャケット一覧も見てほしい。

HI-STANDARD CDジャケット一覧

👇そして、こっちがエルレのジャケット一覧。

ELLEGARDEN CDジャケット一覧

 

ついでに画像検索の結果もそれぞれのバンドの写真を見て欲しい。

WANIMA - Google画像 検索

HI-standard - Google画像 検索

ELLEGARDEN - Google画像 検索

 

WANIMAのジャケットはメンバーが満面の笑みや親しみやすく良い人感が溢れてるような表情が多い。

ハイスタやエルレはメンバーがジャケットにいるCDが少ないこともあるが 、写っていてもWANIMAのような表情は少ない。

 

Googleの画像検索では明らかだろう。

WANIMAの写真はみんな笑顔で親しみを感じる。

ピースサインまでしてる写真もある。

 

対して、ハイスタ。

もちろん笑顔の写真や変顔もあるが、カッコつけてる写真やちょっとアウトローな雰囲気の写真も少なくはない。

 

あと、WANIMAは写真で誰も腕を組まないんだよね。

ハイスタは横山健がしょっちゅう腕を組んでる。

心理学的に腕を組む動作は『不機嫌な時や、話を受け付ける気がない時、心理的防衛のため、拒絶、見下し』などの感情がある時ににすることが多い動作と言われている。

つまり、ロックにもメロコアにも興味ない人には、第一印象であまりいい印象を与えられないのだ。

 

ELLEGARDENの写真も、ガンつけていたり、威嚇するような表情だったり、変顔が多い。

たまに笑顔の写真もあるけど、爽やかさはない。

かっこよくても、下手に話しかけたらまずい人たちなのかなというオーラが出ている。(実際のメンバーの人柄は全然違うけども)

 

つまり、WANIMAは見た目こそチャラチャラしてそうだが、つねに爽やかな笑顔で一般層にも「見た目チャラチャラしてそうだけど、良い奴っぽいじゃん」と思わせるギャップがある。

それによって、ロックやメロコアに興味がない人にも受け入れやすい環境になっているのではないだろうか。

 

そして、ライブのMCも全くかっこつけない。

お笑い芸人のような笑いを取りに行く。

熱く語るとしても、他のロックバンドの熱さとは違うベクトルだったりする。

 

つまり、WANIMAは他のメロコアバンドのようにかっこよさやカリスマ性を捨てた代わりに親しみを手に入れたのではないだろうか。

 

刺青が上半身にない

Googleの画像検索で見てみると明らかだろう。

WANIMAの写真には基本的に刺青が写っていないのだ。

メロコアバンドなら多くのバンドマンが入れているであろう刺青を腕や手などに入れていない。

ボーカルの足には大きな刺青がある。

しかし、外向けに発表されている写真は上半身のみの写真が多い。

また、最近のライブでは長いパンツを履く事で刺青を隠している事が多いし、全身が写る写真でも長いパンツやジーパンなどで隠している。

 

それに対して、ハイスタやエルレはどうだろう。

腕にも大きな刺青がある。

隠すことも無くライブでも写真でも普通に見せている。

 

世間的に刺青に嫌悪感を持っている人は少なくはない。

NHKに出演する場合は未だに刺青があるミュージシャンやタレントは必ず隠すような服装をしている。

 

そのため、刺青に嫌悪感や恐怖を感じるような一般層も取り込めたのではないかと思う。

 

歌詞が日本語で毒もない

 Hi-STANDARDの歌詞は全て英語だ。

ELLEGARDENも日本語詞の曲も多いが、英語の曲も多い。

代表曲や人気曲は英語の歌詞が多い。

 

それに対して、WANIMAは日本語だ。

歌詞にほぼ英語は出てこない。

曲名が英語だったとしても歌詞はほぼ全て日本語だ。

日本語に混じって簡単な英単語や初歩的な英文が少し入ってくるだけだ。

 

そして、歌詞の内容も普通の良い事を言っている。

ロックにありがちなひねくれた表現も過激な表現も社会に反発するような表現もない。

仲間、元気、前向き。

どちらかと言うと、歌詞の内容はJ-POPにありがちな表現が殆どだ。

ファンキーモンキーベイビーズと言ってる内容は殆ど変わらない。

曲を聴いても歌詞を読んでも、「この人たちは中指は絶対に立てないだろうな。中指立てる代わりにピースしそうだな」という人の良さが伝わってくる。

 

でも、それは決して悪いことでもない。

普段それほど音楽を聴かない人は、英語だと取っ付き難いと感じる人も多い。

中高生など若い人は「歌詞に共感するか」を音楽を聴く際に重視する人も多い。

WANIMAのわかりやすく前向きな歌詞は多くの人に受け入れられることは当然かもしれない。

 

ここまでの内容をまとめると、WANIMAはメロコアの一般に受け入れられにくい部分をJ-POP化することにより、今までメロコアに興味がなかった人たちや知らなかった人には新鮮に感じさせ、虜にしているのではないだろうか。。

 

RIP SLYMEとWANIMAの共通点

今でも日本の音楽シーンの第一線にいるRIP SLYME。

RIP SLYMEとWANIMAは共通点があるのではと思う。

 

先述までで、WANIMAはメロコアをJ-POP化したと述べた。

RIP SLYMEの場合は、HIPHOPをJ-POP化したのだ。

今まで音楽ファンにしか馴染みのなかったジャンルをJ-POPシーンに馴染ませ、浸透させた(させようとした)部分で共通点があるのではないだろうか。

 

もちろん、RIP SLYME以前もスチャダラパーなど世間に名前が知られたHIPHOPグループはあった。

世間にHIPHOPというジャンル自体は知られていても、その魅力まではなかなか浸透していなかったと思う。

そして、HIPHOP自体にアンダーグラウンドな少し怖い人やヤバそうな人が多いというイメージがあった。

 

しかし、RIP SLYMEからはアンダーグラウンドな雰囲気はなかった。

お洒落でかっこいいお兄さんたちがユーモアたっぷりにラップをしているというイメージだった。

曲も誰かをディスったりはしないし、中指も立てないし、ドスを効かせたラップもしない。

少しエッチで面白い表現でラップをしていた。

そして、“ONE”のような内容的には世界で一つだけの花と同じようなメッセージがこもった名曲もあったりする。

 

タイミングよくKICK THE CAN CREWも同時期にメジャーデビューしたということもあり、HIPHOP自体が盛り上がっていた部分はあるかもしれない。

もちろん、RIP SLYMEはラップもうまいし、トラックも良く出来ているからこそ評価された部分はある。

しかし、HIPHOPグループという形態を取りつつ、HIPHOPの一般層へ浸透しない原因を排除しJ-POP化することがRIP SLYMEの音楽は大ヒットした一番の理由ではないだろうか。

 

RIP SLYMEはJ-POP化してもHIPHOPの精神は忘れていない

RIP SLYMEの功績は日本の音楽シーンに大きいとは思う。

しかし、邪道なやり方と受け取られてしまう部分もある。

 

RIP SLYMEのやり方が気に食わなかったのか、ZEEBRA率いるキングギドラというHIPHOPグループが、RIP SLYMEをディスる内容が歌詞にいれられている、「公開処刑」という曲をリリースした。(他にもDragonAshやKICK THE CAN CREWもディスっている)

 

これに対して、RIP SLYMEは発売したシングル「BLUE BE-BOP」のMVの終盤部分で「THANK YOU FOR YOUR KIND ADVICE AND SUPPORT!(意:親切な忠告と応援をありがとうございます)」とユーモアな表現をして返事をしたことで、このビーフを終わらせた。

キングギドラのディスに対してユーモアを加えた内容で返事をすることで、きちんとエンターテインメントにしている。

ゴリゴリのHIPHOPであるキングギドラよりも邪道とも取られるRIP SLYMEの方が一枚上手だったとわかるエピソードだ。

 

この曲中で相手をディスり喧嘩するという文化はHIPHOP独特のものだ。

この出来事によって、RIP SLYMEがHIPHOPの精神は忘れずにきちんと持っていることがわかる。

 

RIP SLYMEがHIPHOPをJ-POPに馴染ませた理由は売上や人気のためもあるかもしれないが、HIPHOPを世の中に広めるためという理由もあるのだろう。

 

WANIMAもメロコアであることは変わらない

WANIMAはメロコアファンからも受け入れられていて、J-POPリスナーにも興味を持たれている珍しいバンドだと思うんですよ。

 

日本のメロコアのパイオニアとも言えるハイスタの横山健のレーベルからもCDをリリースしたということは、業界からはやはり一目置かれるようなメロコアバンドとして認められた存在だろうと思う。

だからこそJ-POPファンだけでなくメロコアが好きなキッズにも受け入れられてるのだと思う。

 

WANIMAの頭角により、メロコアというジャンルがより世間に浸透する日が来るのかもしれない。