オトニッチ

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会いたくて震える西野カナはもういない

西野カナは歌が上手かった

 

一度だけライブを観たことがある。

それは東京事変やperfumeやリップスライムが出演していた、武道館で行われたイベント。

それに西野カナも出演していた。

5年ほど前だったと思う。

 

序盤に出てきた西野カナ。

正直それほど興味がなかった。

きちんと聴いたこともなかったし、自分の好みの系統の音楽でもなかったし。

でもね、中盤あたりから心を持ってかれた。

 

それなりに歌うまいなって観てたのよ。

でね、曲の途中で西野カナがマイクのコードに足を引っかけた。

こけそうになった。

こけそうになりながらも歌っていた。

その姿がプロだなと思ったことと、ちょっとドジっ子でかわいらしくて、印象的だった。

 

こけはしなかったけど、ちょっとしたトラブル。

それも気にせずにパフォーマンスをする西野カナ。

気づいたらステージを真剣に観ていた。

 

テレビではそこまで感じなかったけど、歌が上手い。

声量もあるし、高温の伸びも良いし、ピッチも安定している。

“会いたくて 会いたくて震える~♪”と歌う西野カナの歌声に、心が震えてしまった。

 

ネタにされる西野カナ

 西野カナは曲やその存在がネタにされることが多かった。

“会いたくて 会いたくて”が大ヒットして以降は特にだ。

“会いたくて 会いたくて 震える”というフレーズはキャッチーでインパクトがあり、ネタにもしやすかったのだ。

 

会いたくて 会いたくて

会いたくて 会いたくて

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西野カナは失恋ソングやラブソングが多かった。

そのため新曲が出る度に「また西野カナが会いたがってるwww」「【悲報】西野カナまだ会えない」などとネットでネタにされてきた。

 

ネットだけでなく、“会いたくて 会いたくて 震える”というインパクトのあるフレーズから有吉にバイブというあだ名もつけられた。

 

良くも悪くも、ファン以外には“会いたくて震える西野カナ”というイメージになっていたと思う。

正直、自分も西野カナをバイブと呼んでいた。

 

トリセツというターニングポイント

 しかし、西野カナ=バイブのイメージだった人の印象が最近変わりつつある。

それは、トリセツの大ヒットがあったからだ。

 

トリセツ

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トリセツは”会いたくて震える”でおなじみの『会いたくて 会いたくて』よりもヒットした。

今では西野カナの代表曲はと言えばトリセツだ。

今では西野カナ=バイブではなく、西野カナ=トリセツなのだ。

 

そして、曲調も”会いたくて 会いたくて”のようなR&Bの少し暗めのアレンジがされていた曲と比べると”トリセツ”は明るくポップだ。

今までは彼氏にいつも会いたがってたり、振られたり暗い女のイメージの曲を歌っていたが、トリセツ以降は明るくてかわいらしい愛されている女性のイメージの曲が増えたように感じる。

 

西野カナの方向性の変化

会いたくて 会いたくて震える

君想うほど強く感じて

もう一度聞かせてよ嘘でも

あの日のように好きだよって

 

上記は”会いたくて 会いたくて”の歌詞だ。

失恋ソングでみなさんのご存知のとおり震えている。

別れてしまった彼氏のことが今でも心の底から好きだという気持ちが伝わってくる。

 

これからもどうぞよろしくね

こんな私だけど笑って許してね

ずっと大切にしてね

永久保証の私だから

 

これは”トリセツ”の歌詞だ。

”会いたくて 会いたくて”と比べると多幸感に溢れている。

きっと歌の主人公もきっと幸せなのだろうと思う。

 

トリセツ以降は西野カナは明るくポップな幸せな曲が増えたような気がする。

 

本当はやりたいこともあるのに

メイクも落とさずベッドにダイブ

はいおつかれさん

 

上記は”パッ”という曲の歌詞だ。

パッとしたい日々が続くと歌いつつも、出てくる愚痴といえばこの程度だ。

 

パッ

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別れた彼氏のことを考えると病んでしまって震えていた西野カナではないのだ。

”パツ”の歌詞でも日々がパッとしないと愚痴りつつも、”もったいないから楽しまなきゃ”と歌う前向きな歌詞だ。

 

ちなみに”会いたくて会いたくて”の歌詞は、最後まで報われずに震えて終わる歌詞だ。

 

今の西野カナは明らかに方向性が違う。

それによって、西野カナは震える側の人間から震わせる側の人間に進化したのだ。

 

西野カナは誰を震わせるのか?

例えば、トリセツの場合。

トリセツでは西野カナは震えていない。

会いたいとも言っていない。

もう西野カナは震えないのだ。

 

しかし、その代わり震える人物が出てくる。

それは、歌の登場人物でいうと、主人公の彼氏だ。

 

急に不機嫌になることもあります

理由を聞いても

答えないくせに放っておくと怒ります

 

これはトリセツの歌詞の一部だ。

主人公の彼氏がそうとう理不尽な扱いを受けていることがわかる。

 

意外と一輪の花にもきゅんとします

何でもない日の

ちょっとしたプレゼントが効果的です

センスは大事

 

 こちらもトリセツの歌詞。

彼氏になんでもない日でもプレゼントをねだる上に、センスを大事にしろとプレッシャーをかける。

 

こんな超上からの立場に立ち、それでも”これからもどうぞよろしくね””ずっと大切にしてね”と歌ってしまう西野カナ。

相手の男によっては耐え切れずに別れてしまうかもしれない。

しかし、なぜ西野カナはここまで強気にでることができたのか。

 

それは、彼氏が歌の主人公にベタ惚れだからだ。

 

つまり、こんな扱いしても喜んぶし、彼女のために行動するのだ。

そうとう彼女に依存していると思われる。

きっと「こんなにいろいろやってと言われるとは頼られてる♪」と彼氏は思い、喜びに震えていることだろう。

だからこそ、会いたくて震える日々を歌っていた西野カナも強気にでて幸せな日々を歌うようになったのだろう。

 

そして、もし彼氏が振られた場合。

その時は”会いたくて 会いたくて”で震えていた西野カナのように、彼氏も震えることになるのではないだろうか・・・・・・。

そして、西野カナは震えることはく、次の恋を探す強さもてにいれたのではないだろうか・・・・・・。

 

もしかしたら最初から西野カナは『震わせる側の人間』だった?

ここまで書いて気づいた。

実は、西野カナは最初から『震わせる側の人間』だったのではないかと。

初期の西野カナも自らが震えることによって、他者も震えさせていたのではないだろうか。

 

最初に述べた通り、自分は1度だけ西野カナのライブで生歌を聴いたことがある。

そして、不覚にも歌のうまさに感動して心が震えた。

心が震えた・・・・・・。

震えた・・・・・・。

 

そう、最初から西野カナは歌でリスナーの心を震えさせたからデビュー当初からヒットをし、今でも人気歌手なのではないだろうか。

 

西野カナのファンや曲を聴いていた人以外も震わせていたはずだ。

例えば、ネットで西野カナを「また会いたがってるwww」「西野カナ、まだ会えないwww」とネタにしていた人たちもそうだ。

世の中には多くの芸能人がいる。

西野カナよりもキャラが濃い人も多いだろう。

それでも西野カナがネタにされた。

それは、ネットでネタにする人たちに「西野カナをネタにして何か言いたい!」と思わせるほど心を震わせたからだ。

 

有吉だってそうだ。

有吉が西野カナに”バイブ”というあだ名をつけたことも、西野カナが有吉に対して、『震える人』と認識させるだけのインパクトを残したからだ。

 

つまり、西野カナは最初から『震わせる側』の人間だったのだ。

偶然『震わせる側の人間』が震えていたにすぎなかったのだ。

 

西野カナで震えたことない人は、ぜひ西野カナを聴いて、震えてみてほしい。